コンテンツマーケティングは、近年多くの企業や個人事業主が行っているマーケティング手法の一つです。ネット広告やCMは閲覧されずスキップされやすい傾向があるのに対し、有益な情報を提供するコンテンツマーケティングは、目にとまりやすいだけでなく信頼も得やすく、認知度向上とコンバージョンにつなげられるというメリットがあります。
この記事では、コンテンツマーケティングに関する基礎知識をまとめました。コンテンツマーケティングの戦略の立て方やコツ、成功事例も紹介しているので、コンテンツマーケティングを始めたい方は、ぜひ参考にしてください。
コンテンツマーケティングとは

コンテンツマーケティングとは、消費者が求める役立つ情報(コンテンツ)を継続して提供し、信頼関係を築きながらブランドや商品・サービスの理解と興味を促すマーケティング手法です。直接的な売り込みを行うのではなく、価値ある情報を届けることで警戒心を下げ、購買への自然な流れをつくる点が特徴です。
例えば、割引クーポンの配布はコンテンツマーケティングではありませんが、商品の効果的な使い方を紹介するメルマガはコンテンツマーケティングに該当します。
コンテンツの形式は多岐にわたり、ブログ、メルマガ、動画、SNSなどのオンラインコンテンツに加え、セミナーやホワイトペーパーなどのオフライン施策も含まれます。これらのコンテンツを戦略的に活用することで、興味喚起からファン化、購入までの自然な導線をつくることが可能になります。
コンテンツマーケティング戦略の立て方とコツ

1. 課題と目的の設定
コンテンツマーケティングを行う前に、まず「何の課題を解決したいのか」「どのような成果を得たいのか」を明確にすることが重要です。
コンテンツマーケティングの成果が出るまでには一定の時間が必要なため、短期間で売り上げを上げたい場合や、即効性のある施策を求めている場合は向いていません。
また、コンテンツ制作や運用には社内リソースが必要となるため、いつまでに成果を出したいのか、どの程度の体制で取り組めるかを踏まえて実施することが大切です。
マーケティングの目的とリソースを明確にしてから取り組むことで、効果を最大化しやすくなります。
2. ペルソナ設計
ペルソナ設計とは、商品やサービスを利用する顧客像を具体化することです。年齢や性別、仕事などにとどまらず、価値観や生活スタイル、趣味、家族構成など、より具体的に顧客像を掘り下げます。
設定したペルソナへの情報伝達を意識することで、具体的で訴求力の高いコンテンツがつくれます。
3. カスタマージャーニーマップ作成
カスタマージャーニーマップは、顧客が商品・サービスを購入するまでの行動や思考を可視化したもので、顧客目線に立ったコンテンツ作成とコンバージョン率向上のための施策を講じることができます。
ペルソナの行動や感情、思考を予測することで商品・サービスの認知から購入に至るまでのプロセスを時系列化し、購買意欲を高めるための対策を練ることができます。
4. コンテンツリスト作成
作成したペルソナとカスタマージャーニーマップをもとに、消費者の求めるコンテンツをリスト化します。
コンテンツリストは膨大になる可能性があるので、カテゴリーごとに分けたり、ウェブサイトやSNSなどコンテンツを投稿する場所ごとに分けたりするのがおすすめです。
5. KGI・KPIの設定
コンテンツの対象と内容が決まったら、コンテンツマーケティングの目的に応じてKGIとKPIを設定します。
- KGI:マーケティングの最終的なゴール(例:新規成約数の増加、売り上げ10%向上)
- KPI:KGI達成のために追う中間指標(例:PV数、資料ダウンロード数、問い合わせ数)
また、KPIを考える際に「SMARTの法則」を活用すると達成可能な目標を立てやすくなります。
- Specific(具体的):具体的な数字や期限を設定する
- Measurable(測定可能):ツールを利用して数値を測定できる状態にする
- Achievable(達成可能):現実的かつ実現可能な目標にする
- Relevant(整合性):最終目標や事業の方向性と関連性を持たせる
- Time-bound(期限設定):達成までの明確な期限を定める
6. コンテンツ作成・配信
コンテンツリストを作成し、KGI・KPIも設定できたら、優先順位を決めて作成に取りかかります。コンテンツ作成には一定の時間が必要になるため、自社で行う場合はコンテンツカレンダーなどをつくって、作成スケジュールや公開スケジュールをあらかじめ決めておくと効果的です。リソースが不足している場合は、制作会社へ業務委託することも検討すると良いでしょう。
作成したコンテンツは、自社ウェブサイトやオウンドメディアへ掲載し、SNSでも積極的に発信します。また、購入フェーズに近いユーザー向けのコンテンツを配信する場合は、広告配信を併用することでコンバージョン率の向上につながります。
7. 効果測定
コンテンツマーケティングを効果的に行うには、配信後に必ず効果測定を行い、改善を続けることが重要です。まず、設定したKPIを達成できているかを確認し、良かった点と改善点を整理しましょう。
GoogleアナリティクスやGoogle Search Console(グーグル・サーチ・コンソール)といった無料の分析ツールを活用すれば、PV数、CV数、ユーザー属性などを可視化できます。データをスプレッドシートに出力すれば、KPIの達成状況を効率よく評価できるようになります。これらの結果をもとに、次回の配信タイミングやコンテンツ内容、配信メディアを最適化しましょう。
コンテンツマーケティングの8つの具体例

コンテンツマーケティングは主に8種類あり、1種類に限定して行うことも可能ですが、複数種類を組み合わせることで、より効果的なマーケティングが実現できます。それぞれの特徴を理解し、自社商品やサービス、ターゲット層に合ったコンテンツマーケティングを行いましょう。
1. ブログ
ブログは、コンテンツマーケティングのなかでもよく行われる手法の一つです。消費者の疑問に答える記事を作成してブログサイトへの訪問を促し、ECサイトや商品紹介ページへの導線をつくります。ターゲット層が検索することが予測されるキーワードを使用したり、SEO対策を行って検索順位を上げたりして、多くの消費者に記事を読んでもらえる工夫をするとより効果的です。
2. インフォグラフィック
コンテンツマーケティングにおいて、情報を図や表、チャートを使って見やすく表示したインフォグラフィックは、積極的に取り入れたい手法の一つです。一目で情報がわかりやすく、短い時間で興味を持ってもらいやすいというメリットがあります。また、文章だけのコンテンツと比べて拡散されやすいという特徴もあり、認知度向上にも有効な手段といえるでしょう。
3. ポッドキャスト
音声で配信するポッドキャストは、多くの個人や企業が取り入れているコンテンツマーケティングの一つです。ポッドキャストは、書くことよりも話すことを好むソートリーダー(特定の業界や分野での先駆者)を紹介する媒体としても最適です。また、企業のリーダーと業界の著名人ゲストとの対談形式でのコンテンツをつくることもできます。
4. 動画
動画を使ったコンテンツマーケティングは、文章や画像に比べると多くの情報を短時間で伝えることができ、印象に残りやすいという特徴があります。視覚と聴覚に訴えることのできる動画は、その臨場感ゆえに視聴者の感情を揺さぶるのに長けており、ストーリーテリングにも適しています。さらに、一度作成した動画はウェブサイトやSNSで利用できるため、さまざまなメディアを使って効率よく拡散することもできます。近年人気が高まっているTikTok(ティックトック)やYouTubeショートなどの短い動画の活用も検討してみてください。
5. SNS
SNSは拡散力が強く、親近感を持ってもらいやすいことから、コンテンツマーケティングに適しています。Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)、TikTokなど、各SNSにはそれぞれの特徴があるため、媒体に合わせた運用が必要です。またSNSはユーザーとの双方向コミュニケーションができ、コメントやDMなどを通して顧客のニーズに応えることで、顧客維持にも役立ちます。
6. インタラクティブコンテンツ
インタラクティブコンテンツとは、情報発信者と視聴者が相互にやりとりできるコンテンツのことです。情報を受け取るだけの一般的なコンテンツと比べて、インタラクティブコンテンツは潜在顧客の興味を引きつけやすい、シェアによる拡散が期待できるといったメリットがあり、コンテンツマーケティングの手法として近年注目を集めています。例えば、SNSの「いいね」が一定数を超えたら期間限定でお得情報を公開する、ゲームやクイズの回答に合わせて表示される内容を変えるといった方法があります。
7. メルマガ
メルマガでのコンテンツ配信はメールマーケティングの一つで、コンテンツマーケティングと相性が良い手法として知られています。役立つ情報の配信だけではなく、ブログやウェブサイトへ誘導するためにURLを添付したり、新着のホワイトペーパーの告知をしたりといったことが可能です。ウェビナーやイベント開催の告知にも活用できます。
8. セミナー
セミナーを活用したコンテンツマーケティングは、商品購入を直接促す場ではなく、見込み顧客に有益な情報を提供することを目的として実施します。形式はオンライン・オフラインのどちらでも構いません。オフラインの場合は、対面でコミュニケーションが取れるため、見込み顧客との関係構築が進みやすい点がメリットです。一方、オンラインセミナーは場所や時間の制約が少なく、多くの参加者を集めやすいという利点があります。
コンテンツマーケティングの成功事例
キナリノ
ファッションから生活雑貨、グルメ、美容、旅行など幅広いカテゴリーの記事が掲載されているキナリノは、圧倒的な記事数と情報量が特徴です。
記事内には、販売している商品へのリンクボタンがあり、気になる商品をすぐ購入できるよう導線が引かれています。気になるページはお気に入りに入れることができ、あとでじっくり読みたいユーザーのニーズにも応えています。SNSも定期的に更新されており、マルチチャネルマーケティングの事例としても参考になります。
経営ハッカー
経営ハッカーは、クラウド会計ソフトのfreee株式会社が運営している自社メディアで、ブログコンテンツマーケティングで成功を収めた代表的な事例です。
会計士や税理士など、専門知識とノウハウのある専門家に記事を執筆してもらうことでユーザーとの信頼関係構築に成功しています。記事のクオリティも高く、専門的な内容をわかりやすく解説している点も、高く評価されている理由の一つです。
北欧、暮らしの道具店
食器や家具、雑貨を扱うECサイトの北欧、暮らしの道具店は、読み物として楽しめるバイヤーの裏話や、時間がない人も短時間で読み終えることができるミニコラムが充実しています。体格の異なるスタッフによる着用レポートもあり、試着ができないというECサイトユーザーの不安を解消しています。
また、YouTubeのアカウントには北欧のライフスタイルをテーマにしたさまざまな動画がアップされており、取扱商品を実際に使用する場面が盛り込まれているため、自宅での使用シーンを想像しやすく、購入ハードルを下げる効果が期待できます。SNSへの投稿も充実していて、総合的なコンテンツマーケティングの参考になります。
まとめ
コンテンツマーケティングは、従来の広告とは異なり、提供するコンテンツを通して消費者との信頼関係を築き、将来的な商品・サービスの販売へとつなげる手法です。ブログや動画、SNSなどその種類も多岐にわたり、自社のビジネスモデルやターゲットユーザーに合わせて、複数のマーケティング手法を組み合わせて行うことでより効果を発揮します。
今回紹介した成功事例や戦略の立て方とコツを参考にしながら、コンテンツマーケティングを実践してより多くの潜在顧客にアピールし、ブランド認知度向上や売上アップを目指しましょう。
続きを読む
コンテンツマーケティングに関するよくある質問
コンテンツマーケティングとSEOの違いは?
コンテンツマーケティングは消費者に役立つ情報を発信するマーケティング手法ですが、SEO(検索エンジン最適化)は、検索エンジンで検索をしたときにページの上位に表示されるように行う対策である点が異なります。
コンテンツマーケティングとデジタルマーケティングの違いは?
コンテンツマーケティングとデジタルマーケティングの違いは、コンテンツマーケティングはオンライン、オフラインのどちらでも行えるマーケティングですが、デジタルマーケティングはオンライン上で行われるマーケティングである点にあります。
コンテンツマーケティングとウェブマーケティングの違いは?
コンテンツマーケティングはウェブサイトやSNS、動画、ポッドキャストなどさまざまな種類のマーケティングの総称であるのに対し、ウェブマーケティングはウェブサイトに特化したマーケティング手法を指す点が異なります。
文:Momo Hidaka





