マーケティング活動が成功するかどうかは、効果的かつ具体的な目的を設定できるかどうかに大きく左右されます。
明確な目的があることで、計画から実行まで一貫したロードマップを描くことができ、施策の効果も正確に測定できるようになります。実際、目的を具体的に設定しているマーケターは、そうでないマーケターに比べて約3倍高い成功率を持つといわれています。
この記事では、成果につながるマーケティングの目的の例と、その効果的な設定方法について解説します。
マーケティングの目的とは?

マーケティングの目的とは、マーケティング計画の中で設定される明確で測定可能な目標のことを指します。さらにその目的は、特定の期間内に達成するべき成果を示す指針となります。例えば「次の四半期までに顧客獲得コスト(CAC)を10%削減する」といった具体的な目標を定める必要があります。
効果的なマーケティング目的の条件(SMARTの法則)

マーケティングの成果を最大化するには、SMARTの法則に基づいた明確な目標設定が欠かせません。SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限)の5要素で構成されるフレームワークです。これらの要素を意識することで、実行しやすく成果につながる目的を設計できます。それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。
1. 具体的である
目標を具体的に設定することで、チームの集中力が高まり、行動の方向性が明確になります。
一方で、目標が広すぎたり曖昧だったりすると、何から手をつけるべきか判断できず、時間やリソースを無駄にしてしまうことがあります。そのため、「何を」「どれくらい」「いつまでに」達成したいのかを数値で示すことが重要です。
例えば、収益を増やすよりも昨年の収益を倍増させるといったように、明確な数字を設定することで、チーム全体が同じゴールに向かって集中できます。
2. 測定可能である
目標の達成度を客観的に評価できる指標(KPI)を設定することが大切です。
複数の測定方法がある場合は、あらかじめ「成功をどのように定義するか」を明確にしておきましょう。
例えば、「ブランド親和性を高める」という抽象的な目的も、NPS®(ネット・プロモーター・スコア)を活用すれば、定量的に評価できます。
3. 達成可能である
目標は、モチベーションを高めつつも、現実的な範囲で達成可能なものである必要があります。
マーケティング部門の予算やリソース、期間を踏まえて設定しましょう。例えば、「3か月でSNSフォロワーを500万人に増やす」よりも「6か月で全プラットフォームのフォロワーを15%増加させる」といった現実的な目標の方が効果的です。
4. 関連性がある
設定する目的が、企業全体のビジネスゴールと連動していることも重要です。マーケティング活動が組織の長期的な成功にどのように貢献するのかを明確にすれば、戦略全体の一貫性が保てます。例えば、「顧客維持率を高める」という全社的な目標を持つ企業であれば、マーケティングチームは「3か月以内にカスタマーサポート担当者を4名増員する」といった具体的な行動目標を設定できます。
5. 期限を設定する
期限のない目標は、優先度が下がりやすく、成果の検証も難しくなります。「いつまでに」「どの程度達成するのか」を明確にすることで、計画的に進捗を管理できます。例えば、「利益を増やす」ではなく、「今後6か月で利益率を10%向上させる」と期限を設定することで、行動のスピードと精度が高まります。
マーケティング目的の設定に活用できるフレームワーク

OKR(Objectives and Key Results:目標と主要な成果)
OKRは、「目標(Objective)」と「主要な成果(Key Results)」の2つの要素から、目標達成までの進捗状況を測るフレームワークです。まず達成したいゴールを目標として定め、その進捗を測定するための定量的な指標として主要な成果を設定します。
例えば、「売上を前年の2倍にする」という目標に対して、マーケティングの目的として設定する成果では「デジタル広告経由の新規訪問者を〇%増やす」「ランディングページの改善でコンバージョン率を〇%に高める」などが考えられます。それぞれの成果は「クリアできたか/できていないか」で評価し、設定した成果のうちどれだけがクリアできているかで、最終的な目標達成までの進捗を測ります。
KPI(Key Performance Indicator:主要業績評価指標)
KPIは、特定の領域におけるパフォーマンスを数値で測定するための指標です。 マーケティングの目的にかかわる代表的なKPIには、「月間サイト訪問者数」「検索順位」「CVR(コンバージョン率)」などがあります。KPIを設定することで、施策の成果を定量的に把握し、改善すべきポイントを明確にすることができます。
PEST分析
PEST分析は、政治(Political)・経済(Economic)・社会(Social)・技術(Technological)の4つの外部環境から市場を分析するフレームワークです。自社がコントロールできないマクロ要因を整理し、今後のビジネス環境の変化を予測する目的で用いられます。ビジネスに影響を与える変化とは、例えば政府の規制や金利、消費者の価値観、テクノロジーの進化などが挙げられます。PEST分析を行うことで、企業は市場のチャンスやリスクを把握し、タイムリーなマーケティング目的の設定に役立てることができます。
3C分析
3C分析は、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から状況を整理するフレームワークです。顧客のニーズや購買行動を理解し、競合他社の強み・弱みを分析し、自社のポジショニングを明確にします。これにより、マーケティングを通じて「どの市場でどんな価値を届けるべきか」という目的設定が可能となります。マーケティング戦略や商品開発の初期段階で最もよく使われる分析手法の一つです。
SWOT分析
SWOT分析は、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の4つを整理し、戦略立案に活かすフレームワークです。自社の内部要因(強み・弱み)と、外部要因(機会・脅威)を組み合わせて分析することで、より実行可能で現実的なマーケティング戦略を導き出せます。例えば、「自社のブランド力(強み)」と「市場の成長トレンド(機会)」を組み合わせることで、チャンスを見逃さず成長につながるマーケティング目的を具体化できます。
マーケティングの目的の例

売上を増加させる
多くのマーケティングチームは、収益や販売数を伸ばすことが活動の中心となっています。売上の増加につながるマーケティングの目的としては、「1年間のリード獲得200件」、「3ヶ月間のコンバージョン率を20%に改善」、「キャンペーン期間中の平均注文額(AOV)1万円以上」などが考えられます。
ブランド認知度を高める
新規顧客に自社ブランドを知ってもらうことは、すぐに購買につながらなくても長期的にはプラスとなる重要な投資です。その達成に向けたマーケティングの目的としては、「1ヶ月間のウェブサイト訪問者数1万人」、「検索インプレッション数10万件」、「1年後のSNSフォロワー数30%増」などがあげられます。認知度の向上は、見込み顧客の増加や顧客ロイヤルティの向上につながります。
新製品を市場に投入する
新しい製品やサービスのリリースは、企業にとって重要な成長機会です。その成功には、社内外のチームとの連携や、ターゲット市場へのメッセージ設計が欠かせません。新製品をリリースする際に設定しておくべきマーケティングの目的としては、「発売初月の目標販売数」や「キャンペーンを通じて問い合わせ数を〇〇件獲得する」などがあげられます。
顧客獲得コスト(CAC)を下げる
売上を伸ばすだけでなく、より効率的に顧客を獲得することも重要です。広告費や販促費を適正化し、1人の顧客を獲得するためのコスト(CAC)を下げることで、利益率を改善できます。収益から逆算して「CACを5000円」というマーケティングの目的を設定したならば、ターゲティング精度の向上や、比較的コストのかからないオーガニックトラフィックの強化(SEO・SNS運用)などの施策を行う必要性が見えてきます。
マーケティングの目的を設定する方法

1. 会社全体の事業目標を理解する
まずは、経営層が掲げるビジョンやミッション、事業方針を明確に把握しましょう。
マーケティング戦略と企業全体の方向性がずれていると、短期的な成果が出ても長期的な成長にはつながりません。このビジョンを実現するために、マーケティングはどんな役割を果たすべきか?を明確にすることが、最初のステップです。
2. OKRや分析フレームワークで目的の候補を絞る
会社全体の方針を踏まえたうえで、OKRの考え方をもとに目標達成までのプロセスを細分化します。またその際には、SWOT分析や3C分析などのフレームワークを活用することで、マーケティングの目的につながる自社の改善点や市場のニッチを見つけやすくなります。
3. SMARTの法則で目的を明確化する
設定したOKRをもとに、マーケティングの目的となりそうな方向性が見つかるでしょう。SMARTの法則を活かして、具体的かつ現実的なマーケティングの目的を設定していきます。このステップによって、曖昧な目標を実行可能なアクションプランに落とし込むことができます。
4. 成果を測定し、改善につなげる
マーケティングの目的は「設定して終わり」ではありません。進捗を数値で測定できるKPIも設定しておき、客観的な指標で定期的に現状を確認していきます。成功した施策は強化し、成果が出なかった施策は原因を特定して修正します。この改善サイクルを繰り返すことで、戦略全体の精度が高まり、より効率的に目標を達成できるようになります。
まとめ
マーケティング戦略を成功へ導くためには、その目的が明確に設定されていることが第一歩となります。目的が具体的で測定可能であれば、チーム全体が同じ方向を目指し、成果を正確に評価できます。
OKRやKPIといったフレームワークを活用し、SMARTの法則に沿って現実的な目標を立てることで、計画性と再現性の高いマーケティング活動が実現します。また、PEST・3C・SWOTなどの分析を組み合わせることで、外部環境や自社の立ち位置を把握し、より効果的な戦略を立てることができます。
マーケティングの目的は、単なる数値目標ではなく、企業の成長を導く羅針盤です。目的を正しく定義し、継続的に改善していくことで、長期的なビジネス成果につなげていきましょう。
よくある質問
マーケティングの目的の例とは?
例えば、マーケティングの目的として「ターゲット顧客におけるブランド認知度を、今後6か月で10%向上させる」といった具体的な目標を設定することができます。「誰に」「どの期間で」「どの程度」成果を出すのかを明確にすることで、チーム全体の方向性が一致し、施策の効果測定もしやすくなります。
効果的なマーケティングの目的を設定するには?
効果的なマーケティングの目的を設定するには、SMARTの法則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)を満たすことが重要です。例えば「メールリストの登録者を増やす」よりも、「6か月で登録者数を15%増加させる」と設定すれば、行動計画や成果の評価が明確になります。
文:Takumi Kitajima





