中小企業基盤整備機構の2025年の調査によると、全国の大学の約半数に、企業やアントレプレナーシップ関連活動を行う企業部や企業サークルが存在すると報告されています。近年では高校生を対象にしたビジネスコンテストも行われるなど、若年層の起業家への注目が高まっています。
一方で、新規事業のアイデアを見つけるのは容易ではありません。そこで参考となるのが、すでに成功している若手起業家の事例です。
この記事では、若手起業家向けのビジネスアイデアを解説します。注目を集める日本の若手起業家も一覧で紹介しますので、起業家を目指す人だけでなく、サイドビジネスを探している人も参考にしてください。
若手起業家向けのビジネスアイデア

若年層での起業では特に、学生生活や在職中の忙しいスケジュールでも対応できるビジネスや、趣味に関連するもの、将来のキャリアにつながるアイデアを選ぶと良いでしょう。
さらに、既存ネットワークを活かして、Z世代など今後主要な購買層となるターゲット層のニーズに応えられるアイデアを出すのも有効です。あるいは、在住地域の市場需要を探ることで見つかるアイデアがあるかもしれません。
具体的なビジネスアイデアとしては、以下のものが挙げられます。
- オンデマンド印刷でオリジナルTシャツをデザイン・販売する
- イベント企画ビジネスを立ち上げ、会場や備品手配、人員確保を行う
- 地元のイベントで手作りのアクセサリーやキャンドルなどのハンドメイド販売をする
- 斬新な商品やニッチ市場向けの商品を紹介し販売代行するポップアップストアを運営する
- パーソナルショッピングやインテリアコンサルティングなどの地域密着型サービスを提供する
- デジタルコンテンツ販売やYouTube(ユーチューブ)やTikTok(ティックトック)を収益化する
注目を集める日本の若手起業家の成功事例一覧
「READYFOR(レディーフォー)株式会社」米良はるか
当時大学生だった米良氏は、日本初のクラウドファンディングサービスとなるREADYFORを立ち上げました。スタンフォード大学に留学していた際に、当時アメリカで注目を集めていたクラウドファンディングを知り、帰国後に「今までにないものを作りたい」という思いを胸に起業に踏み切っています。
若手起業家の中でも女性であることや日本初のクラウドファンディングであることに加え、世界規模で経済問題に取り組むダボス会議に日本人最年少で参加したことにより注目を集めました。READYFOR株式会社は、2025年現在190名以上の従業員を抱える企業に成長しています。
「SHE(シー)株式会社」福田恵里
SHE株式会社の代表、福田氏は、学生時代に初心者女性向けウェブスクールを立ち上げ500名以上の受講者を抱えたという経歴を持ちます。アイデアを持つ若い女性が、気軽にデザインを学ぶ環境がないことに疑問を感じて始めたスクール運営は、その後26歳で女性向けキャリア支援事業を行うSHEの設立へとつながっていきます。
主要事業である「SHElikes(シーライクス)」は、女性向けのオンラインキャリアスクールです。50以上の職種やスキルを学ぶことができるだけでなく、学んだスキルで実績を積み、その後のキャリアチェンジに活かせる仕組みができています。福田恵里氏自身が代表就任後に産休に入るなど、女性の働き方やキャリア開発におけるロールモデルとしても注目を集めています。
「株式会社エウレカ」創業者 赤坂優
赤坂優氏は、日本国内や台湾で多くの会員を抱える恋愛・婚活マッチングアプリサービス「Pairs(ペアーズ)」を運営する株式会社エウレカの創業者です。広告営業職としての経験を経て、大学卒業後3年程で、ECサイト事業やフリーランスのマッチングサイトなどのビジネスを立ち上げました。事業を軌道に乗せた後、M&Aで米国企業に事業売却し、現在はエンジェル投資家として若手起業家やスタートアップを支援しています。
赤坂氏は、堅調に伸びている既存事業の売り上げに満足するだけでなく、新規事業開拓のためにあらゆるビジネスの調査を継続することで成功を収めました。また、メンターに起業の基礎や注意点などを助言してもらえたことも、事業成功の要因となっています。
「株式会社Luup(ループ)」岡井大輝
株式会社Luupの創業者である岡井氏は、25歳で起業し、介護士資格を持つ人を必要な家庭に短期で派遣する事業を立ち上げました。しかし、公共交通機関へのアクセスが悪い場所での移動効率の悪さが原因で事業を断念せざるを得ない事態に陥ります。この問題点を逆手に取り、複数の事業転換を経て、モビリティシェアリングサービスへと舵を切っています。
現在の主力事業となる電動キックボードや電動アシスト自転車等のシェアリングサービスは、全国11エリアでのサービスを提供し、車両数は約3万台、累計アプリダウンロード数も300万を超えており、利用者が拡大しています。高齢化社会を見据え、現在のインフラの課題に向き合って、日常生活での利用が可能となるよう設置密度を上げたことが成功につながっています。電動キックボードが行動走行可能となった2023年の道路交通法改正にも貢献しています。
「株式会社estie(エスティ)」平井瑛
平井氏は、三菱地所で海外不動産の投資業務に携わったことが新規事業立ち上げのきっかけとなりました。特にアメリカにおける不動産領域のテクノロジー活用が日本と比べて進んでいたことに刺激を受け、卒業して4年後の2018年に、オフィスビル情報のデータベース「estie pro」などを提供するestieを設立しました。
ベンチャーキャピタルとの面談をかさねて起業資金を調達したり、中学からの友人や大学のゼミ仲間と共に営業からプロダクト開発、採用まで行ったりするなど、人とのつながりやビジョンの共有を大切にすることで、成功へとつなげています。
「株式会社YOUTRUST(ユートラスト)」岩崎由夏
YOUTRUST創業者の岩崎氏は、大企業での採用担当を経て転職市場に限界を感じ、新たな転職支援サービスを開発しました。デザインや開発の経験がない中で、「同僚や友人とのつながりや投稿を通して人材の価値が見えるサービスを作りたい」というアイデアを実現すべく、独学でプログラミングを勉強し、プロトタイプまで完成させています。
同僚や友人知人から紹介してもらうリファラル採用のプラットフォーム「YOUTRUST」は、スタートアップやベンチャー、大手企業など1,700社以上が利用しているという実績を上げています。岩崎氏はアントレプレナーを表彰する「JX Awards」において選考委員特別賞を受賞するなど、起業家としてのプロダクト設計や労働市場の変革推進といった点が高く評価されています。
「株式会社ダイニー」山田真央
山田氏は、元々政治の世界に興味があり、在学中に政治とテクノロジーを組み合わせたプロダクトを制作・ローンチしました。その中で、日常の課題に根差したものを作ることの大切さを痛感し、仲間とアイデアを出しあう中で一致した、飲食インフラの課題を解決するモバイルオーダーシステムを開発・起業しました。
山田氏自身も飲食店でのアルバイト経験があり、飲食業界のインフラの必要性を感じたことも、起業の後押しになっています。山田氏は、LinkedIn(リンクトイン)で海外大手ベンチャーキャピタルの担当者に直接コンタクトを取り、大型資金調達に成功しています。
「みんなのマーケット株式会社」浜野勇介
生活関連サービス事業者と消費者をつなぐマーケットプレイス「くらしのマーケット」創業者の浜野氏は、自身が実家のベランダ修理業者を探した時の実体験をもとに事業を立ち上げています。各事業者に見積もりを取って比較する大変さを感じた経験や、どの業者に依頼したらよいかがわからなかった経験から、サービスを比較できるサイトの立ち上げに至っています。
現在、累計作業数は200万件以上、累計利用者数200万人以上、そして累計出店登録数も9万店にのぼる実績を収めています。立ち上げ当初から3年間は苦戦していたものの、絶対に辞めないという起業家マインドを持って課題に向き合ったことにより、最終的に事業拡大に成功しています。
「株式会社ミツモア」石川彩子
オンライン見積もり・マッチングサービスのミツモア創業者の石川氏は、大学卒業後にMBAを取得し、シリコンバレーでの就職を経て起業しました。在学中から感じていた日本経済の低迷を解決したいとの思いから、日本のGDP向上、中小企業の生産性向上と言う目標を掲げました。まずユニコーン企業を研究して、成功を収めるにはサービスを比較して発注する仕組みを作ることが重要であると気付き、ミツモアの創業に至ります。
資金調達に奔走するなど苦悩があったものの、7年で累計以来数550万件を突破しており、取り扱いサービス数も600種類にのぼります。また、海外進出も視野に入れており、プロダクトを増やす準備も行っています。
「株式会社ZEALS(ジールス)」清水正大
チャットコマースを業界で初めてリリースしたZEALS創立者の清水氏は、有名若手起業家の藤田晋氏(株式会社サイバーエージェント)の著書に感銘を受け、「人生をかけて大きなことをやりたい」という信念のもとに学生起業をしています。
起業することが目的でスタートしたため創業当初はサービスやプロダクトがなかったものの、おもてなしの体験に着目し、チャットを活用して顧客に合わせた接客を行うチャットコマースというサービスを開始しました。
清水氏は2018年のForbesの「アジアを代表する30歳未満の30人の起業家」において、エンタープライズ・テクノロジー部門にもノミネートされています。ZEALSは2022年にアメリカ進出も行っており、グローバル展開が進められています。
まとめ
若手起業家向けのビジネスアイデアには、オリジナルグッズやハンドメイド製品の販売、イベント企画、ポップアップストアといった比較的始めやすいものから、大学での専門知識を活かしたプロダクト開発・販売、実体験や社会の課題から得られたアイデアなどさまざまなものがあります。
この記事で紹介した学生起業家や20代、30代で事業を興し成功している起業家の事例も参考にしながら、新規事業立ち上げのアイデアを考えてみてください。
若手起業家に関するよくある質問
成功している若手起業家に共通することは?
- 身近な問題や不便さに気付いてビジネスに変換できる
- アイデアを形にする力がある
- 行動力がある
- 勤勉さや粘り強さを持っている
- 自分らしさを活かしている
若手起業家とは?
若手起業家とは、若い年齢で企業やビジネスを立ち上げた人のことです。学生起業家だけでなく、20代や30代で事業を興した起業家を指します。
若手起業家として有名なのは?
- マーク・ザッカーバーグ:Facebook創業者。大学在学中に起業
- ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン:Google創業者。大学在学中に起業
- 孫正義:ソフトバンク創業者。大学卒業後に起業
- 堀江貴文:ライブドア創業者。大学在学中に起業
若手起業家におすすめの交流会は?
- AKEY会
- CXOランチ会
- SAMURAI CEO
- Doomoビジネス交流会
- Hive Labビジネス交流会
- EO Tokyo Central
- CLIP TOKYO
文:Masumi Murakami





