起業を成功させるためには、情熱やアイデアだけでなく、事業を支える資金の確保が欠かせません。とはいえ、特に創業初期の段階では、実績や信用が十分でないため、投資家を見つけるのは容易ではないでしょう。
そこで注目されているのが、オンライン上で起業家と投資家をつなぐ投資家マッチングアプリです。これまでの人脈がなくても魅力的な事業計画をうまくアピールすることで、創業初期の段階でも資金調達できる可能性が高まります。また、その他にもさまざまな資金調達ルートが存在するため、自身のビジネスの状況に合わせて組み合わせることで、スムーズに事業をスタートできます。
この記事では、資金調達の方法や、資金調達を成功させるための実践的なポイントを詳しく解説します。投資家マッチングアプリ3選も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
投資家のマッチングアプリとは?

投資家マッチングアプリとは、起業家と投資家をオンライン上でつなぐプラットフォームです。起業家は自身のビジネスモデルや成長戦略をアピールでき、投資家は関心のある分野や成長ステージに合う企業を探すことができます。
投資家マッチングアプリを活用することで、人脈や紹介に頼らず、自身の経歴や事業計画を通じて資金調達できる可能性があります。また、事業アドバイスやネットワーキングの機会を得られる点もメリットです。
投資家のマッチングアプリ・サイト3選
Startup List(スタートアップリスト)
StartupListは、起業家と投資家をつなぐ国内最大級のマッチングプラットフォームです。
起業家は投資レンジや経歴などから理想の投資家を検索し、コンタクトを送ってメッセージ交換を行い、面談を取り付けることができます。独自の審査を通過した人のみが登録できるため、信頼性の高いネットワークが構築されているのが特徴です。また、資金調達に関する相談やイベントも充実しています。
毎月開催される会員限定ピッチイベントでは、約40名の投資家に直接プレゼンする機会も提供されます。StartupListは、資金調達を目指す起業家にとって強力なサポートツールです。
Angel Fund(エンジェルファンド)
Angel Fundは、起業家とエンジェル投資家をつなぐ完全無料のマッチングサイトです。
起業家は掲示板に事業計画を投稿することで、多数の投資家に事業をプレゼンできるほか、個別で投資家にメッセージを送って交渉できます。非公開設定にすると投資家のみに公開できるため、アイデアを守りながら希望する投資形態に合わせて資金調達を進められます。一方、投資家は豊富な案件から出資先を選び、熱意ある起業家に直接コンタクトが取れます。
Angel Fundでは双方向でのやり取りが可能なため、魅力的な事業計画を提供できれば複数の投資家からオファーがくる可能性があります。また、完全無料なため、費用を抑えた資金調達がしたい起業家におすすめです。
Founder(ファウンダー)
Founderは、日本最大級の投資家マッチングプラットフォームです。
会員登録は無料で、事業内容を登録すればすぐに投資家との交渉がスタートできます。創業初期の起業家から年商10億円規模の経営者まで幅広く利用しており、月間の資金調達総額は数億円に達します。エンジェル投資やVC連携、銀行融資支援など、多様な資金調達方法をサポートするFounderは、起業家のビジョン実現を後押しする信頼性の高いサービスです。
投資家・資金調達ルートの種類

友人や家族
友人や家族からの出資は、起業初期に最も身近で頼りやすい資金調達方法のひとつです。
事業のアイデア段階や事業実績が乏しい時期でも、信頼関係をもとに資金を提供してもらえる点が大きな特徴です。銀行融資のような審査や複雑な契約が不要なため、資金を早く調達できるメリットがあります。
一方で、個人的な関係に基づく出資は、ビジネスが思うように進まなかった場合にトラブルへ発展するリスクもあります。そのため、口約束ではなく、出資額・返済条件・出資の目的などを文書で明確にしておくことが重要です。返済不要の援助なのか、将来の利益分配を前提とした投資なのかを明確にすることで、関係悪化を防ぐことができます。
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、主に自らの資金を用いて、スタートアップやベンチャー企業の初期段階に投資を行う個人投資家を指します。特に銀行融資が難しいシード期において、リスクを承知で出資してくれる貴重な存在です。
エンジェル投資家は単なる資金提供者ではなく、過去の起業経験や専門知識、人脈を活かして経営面でサポートしてくれる存在でもあります。資金面の支援に加えて、事業成長に向けたアドバイスや次の投資フェーズへの橋渡しを得られるのは、大きなメリットとなるでしょう。
一方で、出資に伴い株式を譲渡するケースが多いため、経営への関与度や意思決定の範囲を事前に明確にしておくことが大切です。
ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタル(VC)とは、将来の成長が期待できる企業に対して出資を行う、投資専門の法人やファンドのことです。国内ではグロービス・キャピタル・パートナーズやジャフコなどが代表的なVCとして知られています。
VCの最終目的は、スタートアップなどに投資して株式上場(IPO)やM&Aによってキャピタルゲインを得ることです。出資先の企業価値を高めるために、事業戦略の策定支援や人材紹介、業界ネットワークの共有など、さまざまなサポートを提供します。出資対象はすでに一定の事業基盤があり、拡大フェーズにある企業が中心です。
起業家にとって、VCは資金提供だけでなく、経営支援や人材支援を通じて企業の成長を後押ししてくれる強力なパートナーとなります。一方で、出資を受けることで、VCが経営に積極的に関与する場合もあり、経営の自由度が一部制限される可能性もあります。
アクセラレーターとインキュベーター
アクセラレーターとインキュベーターは、スタートアップや起業家を支援するために、育成プログラムを始めとしたさまざまなサポートを提供する組織や機関を指します。
両者は似ていますが、支援対象と支援目的に違いがあります。アクセラレーターはシード期を過ぎたスタートアップ企業の事業成長を目的としています。短期間のプログラムを通じて、メンタリングや資金提供、投資家へのピッチ機会などを提供します。一方、インキュベーターはより初期段階の起業家を対象にしており、アイデアの具体化から事業化までを長期的にサポートする点が特徴です。
どちらも資金面の支援だけでなく、ビジネスモデルの構築、マーケティング戦略の策定、人材育成、ネットワーキングなど、実践的な支援を行うことで事業の基盤づくりを支えます。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネット上のプラットフォームを通じて、不特定多数の人々から少額ずつ資金を集める仕組みです。銀行融資や投資家からの出資に比べて誰でも手軽に参加できるため、スタートアップの資金調達にも適しています。資金調達と同時に市場からの反応を確かめられる点も大きな魅力といえるでしょう。国内ではCAMPFIRE、Makuake、READYFOR、FUNDINNOなどが代表的なプラットフォームとして知られています。
主な形態には、商品やサービスをリターンとして提供する「購入型」、社会的活動などへの支援を目的とする「寄付型」、出資者に利益を還元する「投資型(株式型・融資型)」があります。特に投資型の場合、個人投資家が出資者となるため、アイデアが優れていれば、複数の投資家からの出資を得られるチャンスがあります。資金なしで開業できる可能性もあるのが、投資型クラウドファンディングの魅力です。
ただし、クラウドファンディングではプロジェクトや事業の情報を公開することになるため、アイデアが模倣されてしまうリスクがあります。また、期待した金額を調達できず、事業が頓挫してしまうことがある点にも注意が必要です。
政府・自治体の支援プログラム
政府や自治体では、起業家やスモールビジネスを対象に、事業の立ち上げや成長を後押しするための資金援助制度を提供しています。
代表的なものには、返済不要の補助金や助成金、低金利で利用できる融資制度などがあります。これらは新しいビジネスの創出や地域経済の活性化を目的としており、採択されれば資金面の大きな支えとなります。
特に個人事業主や中小企業を対象にした「小規模事業者持続化補助金」は、起業初期の費用負担を軽減できる制度として人気があります。また、日本政策金融公庫による「新規開業・スタートアップ支援資金」や、自治体が独自に実施する創業支援金などもあります。
ただし、これらの制度は申請時期や要件が細かく定められているため、事業計画書や経費の根拠資料などを丁寧に準備することが必要です。
資金調達を成功させるためのポイント

具体的かつ説得力のあるビジネスプランを作成する
資金調達を成功させるためには、ビジネスプランを通じて自社の価値を明確に示すことが不可欠です。投資家を惹きつける事業計画を作成できるよう、次のポイントを具体的に盛り込みましょう。
- ビジネスモデルや事業内容
- ターゲット顧客や市場規模
- 競合優位性
- 成長戦略
投資家は「その事業が本当に求められているのか」「競合との差別化ができているのか」「この投資がどのように事業成長へつながるのか」を重視します。そのため、製品やサービスがどのような課題を解決し、どの市場でどれほどの成長性を持つのかを、データや事例を交えて具体的に説明することが重要です。
事業の実現性や将来性をビジネスプランを通じて可視化することで、投資家から信頼を得られるでしょう。
資金の使途を明確にする
資金調達を行う際には、資金調達の目的や調達した資金の使い道を明確にしましょう。どんな目的で、どのように資金を活用するのかをしっかりと示すことで、投資家からの理解が得られやすくなります。
例えば、人材採用や商品開発、マーケティング、システム強化など、具体的な使途を段階的に説明し、それぞれがどのように売り上げや市場シェアの拡大に結びつくのかを示すことで、資金計画に説得力が生まれます。
明確な資金計画は、信頼や理解を得るための欠かせない要素です。
調達手段を多様化してリスクを分散する
資金調達では、特定の手段に依存せず、複数の方法を組み合わせてリスクを分散することが重要です。
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルだけでなく、クラウドファンディングや補助金、融資制度などを併用することで、資金の安定性と柔軟性を高めることができます。複数の資金源を確保すれば、ひとつの投資が見送られた場合でも事業計画を継続でき、交渉時にも優位に立てます。また、資金の性質が異なる手段をバランスよく取り入れることで、返済リスクや株式の希薄化といったデメリットを軽減できる点もメリットです。
状況に応じて最適な組み合わせを選択し、安定した資金基盤を築くことが、持続的な成長を支える鍵となります。
まとめ
資金調達は、単にお金を集める行為ではなく、事業の成長を共に支える「パートナー」を見つけるプロセスです。自社の価値提案を明確にし、資金の使途や成長戦略を具体的に示すことで、投資家からの信頼を獲得できます。また、安定した資金基盤を築くためには、エンジェル投資家やVCだけでなく、クラウドファンディングや公的支援など複数の手段を組み合わせることが重要です。
自社の目的や成長ステージに合った投資家との出会いは、ビジネスを次のフェーズへと押し上げる力となるでしょう。
よくある質問
資金調達先を見つけるのは難しい?
資金調達先を見つけるのは簡単ではありません。しかし、実績が乏しいスタートアップでも、クラウドファンディングや助成金など、さまざまな手段を組み合わせることで資金調達は可能になります。重要なのは、市場調査に基づき、事業の実現性や将来性をデータや数値を交えて具体的に示すことです。また、業界イベントやオンラインプラットフォームを活用し、積極的にネットワークを広げることで、資金調達のチャンスを着実に高められます。
投資家に資金援助を求めるにはどうすればいい?
投資家に資金援助を求めるには、まず相手の関心分野を理解し、自社の価値や市場ニーズを的確に伝えることが大切です。明確なビジネスプランと財務予測を提示し、資金の使途や目標金額、投資家へのリターンを具体的に示すことで、信頼性と説得力のある提案につながります。
投資家を選ぶうえで重要なことは?
投資家を選ぶ際は、ビジョンや長期的な目標に共感してくれる相手かどうかを見極めることが重要です。資金力だけでなく、業界での経験や実績、人脈を持つ投資家を選ぶことで、資金以上のサポートが得られます。
文:Takumi Kitajima





