マーチャンダイジングとは

マーチャンダイジング (Merchandising) とは、顧客が欲しいと思う商品を、適切な場所・数量・価格・タイミングで提供するための企業活動を指します。日本語では「商品政策」や「商品化計画」とも訳されます。一般的には、小売業・流通業における品ぞろえや商品仕入れのための計画や管理の意味で使われています。
マーチャンダイジングとマーケティングの違い
マーチャンダイジングは、マーケティング戦略の一つと位置付けられますが、両者の役割や範囲は異なります。
マーケティングとは、価値ある製品やサービスを産み出すことにより、顧客を獲得し、欲求を満たし、維持するためのあらゆる活動を指します。具体的には、市場環境や競合の分析、ターゲット顧客の想定、広告宣伝、販売チャネル構築など幅広い活動や戦略を含みます。
一方マーチャンダイジングは、商品と売り場を起点に、消費者の動向を踏まえて適切な品ぞろえ・数量・価格・タイミングで売り場をつくり、消費者の購買を促す活動です。特に、来店客の購入プロセスは視覚情報から始まることが多いため、店舗において魅力的な形で商品を提示して購入を促すことが重要な業務です。また、売り場では商品展開が重要であるため、マーチャンダイジングは仕入れ担当のバイヤー業務と密接に関連しており、マーチャンダイザーとバイヤーを兼任とする企業も多く見受けられます。
マーチャンダイジングの主な手法3つ

購入客を惹きつけるためのマーチャンダイジング手法として、代表的な3つの方法を紹介します。
ビジュアルマーチャンダイジング
ビジュアルマーチャンダイジング(Visual Merchandising)とは、ディスプレイやポスター、POPなどを利用して視覚的にアピールし、購買意欲を高める手法です。
ブランドイメージに合わせて、店舗のインテリア、カラーコーディネイト、照明、商品ディスプレイ、ポスターなどのビジュアル要素を工夫し、顧客の興味を惹きつけます。また、売り場の清潔さを保つことは、魅力ある売り場づくりの大前提として非常に重要です。
クロスマーチャンダイジング
クロスマーチャンダイジング(Cross Marchandising)は、カテゴリーの異なる商品を関連付けて売り場に並べ、「ついで買い」などの同時購入を顧客に促す手法です。
スーパーマーケットでは、酒の近くにおつまみ、肉の近くに焼肉のたれ、野菜の近くに鍋のもとを配置するといった手法が一般的です。また、家電売り場の「新生活応援フェア」、アパレルの「就活応援フェア」のように、特定のニーズを持った顧客に必要な商品をまとめて提案する方法もあります。
ライフスタイルマーチャンダイジング
ライフスタイルマーチャンダイジングとは、ターゲットとなる顧客層のライフスタイルや趣味、価値観を軸に売り場をつくる手法です。
たとえば、高級家具売り場では、同じテイストを持つソファ、テーブル、椅子、照明などを組み合わせて配置することにより、家具を単にモノとして見せるのではなく、生活スタイルのイメージが湧くような売り場づくりをしています。また、スポーツ用品店では、ジョギングやアウトドアなどの趣味のコーナーの中で、関連するウェアやシューズなどを揃えられるように配置しています。
マーチャンダイジングの成功事例

無印良品
無印良品の商品の特徴は「簡潔さ」にあります。合理的な生産工程から生まれる製品は、とてもシンプルです。これは単なるミニマリズムではなく、「何物にも染まらない」ことにより、あらゆる人々の思いを受け入れられることを目指したものです。
このブランド哲学は、店舗デザインにも生かされています。ブランドのコンセプトに沿ったシンプルなレイアウトにより、商品が整然と配置され、顧客は簡単に商品を見つけることができます。商品ディスプレイには統一感があり、モノトーンを基調としたデザインがブランドのナチュラルなイメージを際立たせています。
蔦屋家電
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開する「二子玉川 蔦屋家電」は、家電だけでなく、本や雑貨など、ライフスタイルをトータルで提案し、独自に仕入れたおしゃれでユニークな商品を展開しています。
たとえば、「食」をテーマにしたエリアには、レシピ本や食にまつわるエッセー、マンガ、小説が並びます。また、隣接した家電コーナーでは、独自の視点でセレクトされた冷蔵庫やトースター、電子レンジなどの家電が、空間に馴染むように美しく配置されています。これにより、家電を「どんなシーンで利用するか」を、容易にイメージすることができます。また「整える」をテーマにした期間は、食のコンシェルジュが「酵素玄米を美味しく炊ける」炊飯器を、美のコンシェルジュが「ボディメンテナンスを習慣づける」マッサージアイテムを紹介するなど、各売り場がテーマ設定に合わせた商品展開を行っています。
マーチャンダイジングのまとめ
マーチャンダイジングとは、顧客のニーズに合った商品を、最適な場所・数量・価格・タイミングで提供するための企業活動を指します。小売業や流通業において、品ぞろえや仕入れ、売り場づくりを計画・管理する重要な役割を担います。
紹介したマーチャンダイジング手法は、常に意識すべき基本施策ですが、リピーターや常連顧客を飽きさせないためには、定期的に以下の様な臨時のプロモーションやイベントを実施することが効果的です:
- 新商品やおすすめ商品のポスター掲出や特設陳列
- 優良顧客向けの優待キャンペーン
- プレゼントや試供品の配布
- 店内での実演販売
- アートを利用した集客(絵画・写真・楽器演奏など)
この記事で紹介した手法や事例を戦略立案に活かし、自社のブランド価値を高めるマーチャンダイジングを実践していきましょう。
マーチャンダイジングに関するよくある質問
マーチャンダイジングとは?
マーチャンダイジングとは、顧客が求める商品を、適切なタイミング・価格・数量・場所で提供し、購買につなげるための活動です。品ぞろえや陳列、価格設定、プロモーションなどを通じ、店舗やオンラインストアで魅力的な売り場をつくることを目的とします。
マーチャンダイジングとマーケティングの手段の違いは?
具体的なマーチャンダイジング施策は、リアルな店舗で行うことが一般的です。商品と売り場を中心に、適切な品ぞろえや陳列、価格を通じて購買を直接促します。一方、マーケティングを展開する手段や媒体は「マーケティングチャネル」とも呼ばれ、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、SNS、メール、DMなど、さまざまな種類があります。マーケティングは市場分析や広告などを含む幅広い活動で、顧客を獲得・維持することが目的です。
オンライン上でのマーチャンダイジングとは?
オンラインストアやデジタルサービスなどのオンライン上のマーチャンダイジングとは、顧客ニーズや行動データに基づき、商品カテゴリーの設計、レコメンド、特集ページの編成などを行い、購買体験を最適化する手法です。実店舗と同様に、商品配置や見せ方の工夫が売上に大きく影響します。
マーチャンダイジングに重要な要素は?
以下の5つが重要とされています。
- 適正な商品:顧客ニーズに合う商品を選定
- 適正な時期:購入タイミングに合わせて提供
- 適正な数量:在庫を適切に管理
- 適正な配置:売り場や画面上で魅力的に陳列
- 適正な価格:需要と利益を踏まえて価格決定
文:Norio Aoki





