環境や資源に配慮したサステナブルな取り組みが求められている現代において、エコパッケージの活用は、環境にやさしい製品利用の一環として世界的に広がっています。エコフレンドリーな製品・サービスを展開することは、環境負荷の低減に貢献するだけでなく、企業ブランディングの強化、顧客との信頼関係の構築にも効果的です。
しかし、エコパッケージの利用に興味があるものの、実際にエコパッケージのアイデアが思い浮かばないことが原因で、行動に移せていない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、エコパッケージの概要と11個のアイデアを紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
エコパッケージとは

エコパッケージ(ECOパッケージ)とは、環境への負担を減らせる性質を持った包装・容器のことです。
プラスチック素材がよく使われる従来の商品パッケージは、自然分解されにくく環境に大きな負荷を与えてしまいます。その代替品として注目を集めているのがエコパッケージです。エコパッケージには、バイオプラスチックや非木材紙といった、二酸化炭素や廃棄物の削減に貢献する資材が採用されています。こうした素材のパッケージを積極的に使用したり、簡易包装や詰め替え式パッケージを取り入れたりすることで、従来よりも環境負荷を抑えた梱包を実現できます。
また、エコパッケージをはじめとした環境に配慮した商品を用いる企業は、消費者から「信頼できる」という印象をもたれやすい傾向があります。製品の機能面だけでなく、環境配慮という価値観が評価基準の一つになる現代では、エコパッケージの活用は、社会的信頼を勝ち取るブランドアイデンティティを確立するうえでも効果的です。
エコパッケージのアイデア11選

1. コンポスト可能な梱包材を使用する
コンポスト可能な素材を利用することで、廃棄物になるはずだった梱包材を、土壌を改良するための材料や肥料として活用できます。
コンポストとは、微生物の力で生ごみなどの有機物を分解・発酵し、肥料に変えるプロセスを指します。大量消費・大量生産が重要視されて化学肥料が用いられるようになる前は、生ごみを処理したり、田畑を耕したりするうえでよく用いられており、決して目新しい技術ではありません。
現在、コンポストの活用は、日本国内外で注目を集めています。長崎県対馬市や静岡県西伊豆町では、「ALL COMPOST PROJECT(オールコンポストプロジェクト)」というコンポスト推進プロジェクトが実施されました。リサイクル率日本一を誇る鹿児島県大崎町の取り組みをきっかけに、県を超えて活動が広がっています。このように、コンポストの活用事例が増えていることから、コンポスト可能な素材を使用したエコパッケージの開発も、今後さらに進展していくことが期待されます。
2. 非木材紙を活用する
非木材紙の活用は、森林環境の保全や、製造時に発生する二酸化炭素削減につながります。非木材紙は木材以外の資源や農産副産物を原料として作られており、次のような効果も期待できます。
- ケナフパルプ:ケナフ植物由来の繊維。ケナフは二酸化炭素の吸収能力が高いほか、収穫サイクルが早いため安定した供給が見込める。
- バガスパルプ:サトウキビの搾汁後に残る副産物。資源の有効活用と廃棄物削減につながる。
- 竹パルプ:竹の栽培には農薬や肥料が必要なく、伐採しても土壌の劣化が起きにくい利点がある。
非木材紙はそれぞれ、独特の風合いや手ざわりがあるのが特徴です。その個性を、商品に同封する名刺やメッセージカード、商品タグなどに活かすことで、ブランドの世界観を反映させながら、環境配慮に対する自社の思いを伝えることができるでしょう。ただし、種類によっては色の再現性やインキの乾きにくさに課題を抱えているため、使用用途に合わせて種類を選ぶ必要があります。
3. FSC認証紙を利用する
FSC認証紙のパッケージを使用することで、環境保全へ貢献するだけでなく、ブランドのイメージアップも期待できます。
FSC認証紙とは、国際的NPO法人であるFSC(森林管理協議会)が定めた規格に基づき、適切に管理・生産された木材から作られた紙のことです。認証マークを取得するには、商品の生産・加工・流通のすべての工程でFSCの要件を満たした管理体制を構築し、第三者認証機関による審査を通過する必要があります。
認証マークがある梱包材を使うことで、森林保全の支援や地球環境の保全に貢献できることに加え、環境問題に真剣に取り組んでいる姿勢を顧客に示せるため、ブランド戦略にも役立ちます。普通の上質紙から、アート紙やコート紙などさまざまな種類があるため、用途に合わせた種類選びが可能です。
例えば、TOPPAN(トッパン)エッジでは、伝票やパンフレット、ダイレクトメールなど、FSC認証紙を使用したさまざまな商品を提供しています。「わんぱ☆くめ〜る」ECOという、FSC認証紙を活用した脱プラスチック封筒も販売しており、エコパッケージの好例といえるでしょう。
4. バイオプラスチックを活用する
バイオプラスチックを活用していくことで、石油由来資源の消費抑制、二酸化炭素の排出削減、プラスチックごみによる環境汚染の抑止を目指すことができます。
バイオプラスチックとは、生物由来の原料で製造されるバイオマスプラスチックと、微生物によって水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックの総称です。石油由来で製造されているプラスチックの代替品として需要が高まっています。
最近では、BIOPAC(バイオパック)をはじめとした、海藻を利用したエコパッケージも登場しています。海藻由来のエコパッケージには、次のようなメリットがあります。
- 人が食べることで、ごみ削減につながる
- 魚も食べられるため、海洋汚染にならない
- 微生物によって、土中で分解できる
- 海藻の栽培を通して炭素排出量の削減に貢献できる
- アレルゲン食品や動物性食品を含まないため、アレルギー疾患を持つ人やヴィーガンの人も気軽に選びやすい

緩衝材や梱包袋など、従来プラスチック製が主流だったパッケージ用品をバイオプラスチック製品に切り替えることで、梱包機能をそのまま保ちながら、環境負荷の低減につなげることができます。
5. 再利用できるパッケージをデザインする
エコパッケージを別の方法で再利用できるようにデザインし、捨てさせない工夫をすることも環境保全に貢献する一つの手段です。
韓国有数の電子機器メーカーであるサムスン電子では、テレビの梱包材を使って段ボールハウスやマガジンラックなど、さまざまなアイテムを製作できるようにしました。梱包材にあるQRコードにアクセスすると、アイテムの製作方法を確認できます。エコパッケージの再利用における優良な事例として、大きな話題を呼びました。

オンライン販売をしている事業者なら、デザイン性と耐久性を兼ね備えた箱を採用したり、シールの代わりにゴムやリボンで箱を留めてシールの剥がし跡を残さないようにしたりするなど、さまざまな工夫を取り入れることで、パッケージを収納ボックスとして二次利用してもらえる可能性があります。
6. 単一素材のパッケージを採用する
1つの素材で製造されたエコパッケージを採用することも、サステナブルな取り組みとして効果的な方法です。
何種類もの資材がパッケージに使われていると、ごみと資源の分別に手間がかかり、リサイクル資源だとしても廃棄物としてまとめて処分されてしまう可能性があります。単一素材で作られたパッケージなら、素材ごとに分別する手間を省くことができるため、リサイクルの促進につながります。廃棄物の削減や資源の有効活用に貢献できる方法といえるでしょう。
7. 簡易包装を心がける
簡易包装は、資源の無駄遣いを減らせるだけでなく、コスト削減の効果も期待できます。
簡易包装とは、過剰梱包を避け必要最低限の資材・包装で梱包する方法です。不必要な資材を利用しないことから、ごみ削減やごみ焼却時の二酸化炭素排出の低減につながります。また、梱包にかかるコストを削減できるほか、ごみ分別の手間が減るため、EC事業者と消費者の双方にメリットがあります。
簡易包装には次のような方法があります。
- 気泡緩衝材で包んでテープで封をする
- 商品をクラフト紙で包んで紐でくくる
- ストレッチフィルムで商品を固定する
- Amazon(アマゾン)が提供するフラストレーション・フリー・パッケージを利用する
Panasonic(パナソニック)では、家電の輸送用ダンボールを一色インクにしたり、緩衝材を折り込み式のダンボールやパルプモールドなどのリサイクル可能な紙資材に変更したりして、簡易梱包に取り組んでいます。

8. 詰め替え可能にする
シャンプーやボディソープ、洗剤などの容器を詰め替え可能な仕様にすることで、資源の使用量を抑えることができます。
詰め替え仕様にし再利用できるようにすることは、パッケージの寿命を延ばすことにつながり、廃棄物削減の効果が期待できます。パッケージの製造数も減らすことができるため、製造過程で発生する二酸化炭素や製造に必要なエネルギーも抑えられるでしょう。
また、詰め替えパッケージは製造コストを抑えられるため、消費者に手頃な価格で商品を販売できるメリットもあります。
9. リターナブルな梱包材を活用する
繰り返し使える梱包材を利用することで、資源の無駄遣いを削減できるだけでなく、サステナブルな取り組みを支援する消費者へのリーチ拡大を狙うことができます。
リターナブルとは、商品を販売・使用した後に回収して、洗浄・再利用することを前提とした製品のことです。これまで使い捨てが当たり前とされてきた梱包材ですが、ECサイト運営者向けのリターナブル梱包材を提供する企業が登場しました。株式会社comvey(コンベイ)が提供する「シェアバッグ®︎」は、荷物が届き次第、郵便ポストに投函するだけで返却できる梱包バッグです。提携しているブランドのオンラインショップにはcomvey独自のシステムが導入され、購入者はカート決済時に通常梱包とシェアバッグのどちらかを選択できます。消費者にとっては希望の梱包方法を選択できるため安心感があるほか、シェアバッグを利用した場合は返却後にクーポンがもらえるメリットもあります。

環境に配慮した商品・サービスの需要が高まっている中、こうしたサービスを活用しネットショップを運営することは、消費者からの信頼獲得やブランドロイヤルティの向上につながるでしょう。
10. 軽量化・縮小化する
包装を軽量化・縮小化することも、環境にやさしい取り組みの一つとして多くの企業が実践しています。今までよりも小さく、軽い状態で輸送できれば、一度の移動でより多くの商品を運ぶことができ、輸送効率の向上と輸送時の燃料消費・二酸化炭素排出の削減が期待できます。
また包装を小さくできれば資材の使用を抑えることにつながり、梱包にかかるコストや廃棄物の削減も図れます。
11. 商品をまとめて配送する
商品をまとめて配送し、従来より配送回数を減らすことができれば、二酸化炭素排出の削減に貢献できます。また、まとめて配送することで梱包資材の使用を減らせるケースもあるため、ごみを減らすうえでも効果的です。
例えば、まとめての配送を了承してくれた購入者に割引をしたり、クーポンを配布したりするなど工夫をこらすことで、同時配送の取り組みに対して、顧客から理解が得られやすくなるでしょう。
まとめ
エコパッケージの利用は、環境保全に貢献することに加え、SDGsなどの取り組みが重要視される現代において、顧客から信頼を得るうえでも非常に有効です。
エコパッケージのアイデアは、FSC認証紙やバイオプラスチックなど、環境にやさしい資材を採用することだけではありません。二次利用できるデザインのパッケージを活用したり、簡易包装やパッケージの軽量化・縮小化に取り組んだりすることも、エコパッケージの手段になります。
エコパッケージの選択肢は多岐にわたるため、ぜひ自身が導入しやすい方法から実践してみてください。
よくある質問
エコパッケージとは?
エコパッケージとは、環境への負担を減らせる性質を持った包装・容器を指します。SDGsやカーボンニュートラルの実現などの世界的な取り組みが広がる中で、リデュース・リユース・リサイクル・リプレイスでき、環境保護の一環となるため注目が集まっています。
エコパッケージのアイデアは?
- コンポスト可能な梱包材を使用する
- 非木材紙を活用する
- FSC認証紙を利用する
- バイオプラスチックを活用する
- 再利用できるパッケージをデザインする
- 単一素材のパッケージを採用する
- 簡易包装を心がける
- 詰め替え可能にする
- リターナブルな梱包材を活用する
- 軽量化・縮小化する
- 商品をまとめて配送する
エコパッケージが重要な理由は?
従来の梱包がもたらす環境負荷を低減するために、エコパッケージは重要です。プラスチック素材の従来のパッケージは、自然分解されにくいため、適切に処理されなかった場合は海洋汚染の原因になります。また、プラスチックの原料が石油なため、焼却処理した場合、二酸化炭素が排出され地球温暖化の原因になりえます。持続可能なパッケージに置き換えることでこうした問題を防ぎ、環境保全に貢献できます。
エコパッケージを利用するメリットは?
- 環境保全に貢献できる
- 企業のブランド価値を高められる
- 梱包のコスト削減や梱包業務の効率化につながる
- 投資家や取引先からの評価が向上する
文:Ryutaro Yamauchi





