ジュエリーのECビジネスを成功させる上で鍵となるのが、商品画像です。質感や細部まで鮮明に写った写真は、顧客に安心感を与え、購入意欲を高めます。そのため、ジュエリーを正確かつ魅力的に表現することが欠かせません。
顧客を惹きつけるジュエリー写真を撮影するには、光の反射や指紋・汚れの映り込みを防ぎ、照明を適切に調整し、カメラのシャッタースピードや絞りを工夫するなど、さまざまなスキルを駆使する必要があります。
この記事では、高品質なジュエリー写真を低コストで撮影するための実践的なヒントを紹介します。一貫性のある構図作りや背景選び、照明の工夫、そしてレタッチまで、ジュエリーを美しく撮影するためのコツをひと通り紹介しているので、ぜひ参考にしてください。また、必要機材や撮影時の注意点についても解説しています。
ジュエリー写真撮影のコツ13選

1. 一貫性のある写真を撮る
ジュエリー写真の撮影では、一貫性を持たせることがブランド価値を高める上で大切です。
商品の魅力は単体でも伝わりますが、全体を通して統一された世界観を見せることで、ブランドの価値観を効果的に伝えることができ、顧客との長期的な信頼関係につながります。一方で統一感がないと、ページ全体が雑多な印象になり、プロフェッショナル感やブランドストーリーが薄れてしまいます。効果的なブランディングができるよう、撮影前にテーマや色調、見せたい雰囲気を決めておきましょう。
例えば、背景色や被写体の配置基準、画像のトリミング比率などを事前にルール化し、シリーズやコレクション全体で一貫性を保ってみてください。こうしたビジュアルの統一は、商品の価値を引き上げ、記憶に残るブランドを生み出せる可能性があります。
2. ジュエリーに合った背景を選ぶ
被写体の魅力を最大限に引き出せる背景を選びましょう。ジュエリー写真の印象は、背景の選び方で大きく変わります。最適な背景を選ぶことは、購入意欲を高めることにつながります。
高級感を演出したい場合は落ち着いたトーンや無地の背景、華やかさを出したい場合は柔らかい色や素材感のある背景が効果的です。背景が派手すぎるとジュエリーが埋もれ、逆に寂しすぎると印象が弱くなります。撮影前にターゲット層やブランドイメージを踏まえ、背景の色・質感・柄を選定しましょう。
また、シリーズやコレクションごとに背景を統一すると、ブランドの世界観が強化されます。背景は単なる飾りではなく、ジュエリーの価値や物語を伝えるための舞台装置のようなものと認識しておきましょう。
3. ジュエリー全体のスタイリングを整える
ジュエリーのスタイリングを整えることで、写真全体の完成度を高めることができます。
例え美しい構図や背景があっても、チェーンがねじれていたり、宝石の角度がずれていたりすると、印象が損なわれてしまいます。撮影前には必ず指輪やネックレスの向きを整え、汚れや指紋を必ず拭き取りましょう。
チェーンは緩やかなカーブを描くように置くと、自然で上品なラインになります。また、ピアスやブレスレットなど複数アイテムを配置する場合は、バランスを意識して距離感や高さを調整してください。
ブランドの世界観やターゲット層に合わせ、シンプルに見せるか華やかに見せるかを決めることも重要です。細部まで整えられたスタイリングは、写真から伝わる質感や高級感を格段に引き上げてくれます。
4. 三分割構図や対角線構図で配置する
被写体に効果的に視線を集め、印象に残るジュエリー写真を制作するには、構図の工夫が重要です。
ジュエリー写真で特に使いやすいのは「三分割構図」と「対角線構図」です。三分割構図とは画面を縦横それぞれ三等分し、交点や分割線上にジュエリーの中心を配置する方法で、安定感やバランスを保つことができます。一方、対角線構図は被写体や主要なラインを対角線に沿って配置することで、奥行きや動きのある印象を与えます。小さなジュエリーでも、構図を工夫すれば視覚的な広がりや高級感を与えられます。
撮影時にはカメラのグリッド表示を活用し、宝石の輝きやチェーンの流れが自然に視線を誘導するよう配置してみましょう。構図は写真全体の雰囲気を決定づける、見落とせない要素です。
5. 三脚を使って手ブレを防ぐ
ぶれのないクリアな写真が撮影できるよう、三脚を使いカメラをしっかりと固定しましょう。
ジュエリー撮影では、わずかな手ブレが写真の鮮明さを損ない、宝石の輝きや細部の部分がぼやけてしまいます。特にマクロ撮影や低速シャッターを使う場合、ほんの数ミリの揺れでも画質に影響します。三脚を使用すれば、シャッタースピードが遅くても安定した構図を保てるため、細部までシャープで高品質な写真が撮れるでしょう。
さらに、カメラの位置や角度を固定できるので、同じアングルで複数枚撮影したり、照明や小物の配置を微調整したりする際も効率的です。リモートシャッターやセルフタイマーと併用すれば、シャッターボタンを押すときの振動も防げます。安定感のある写真は、商品ページの信頼感にもつながります。
6. 望遠レンズを使ってゆがみを抑える
望遠レンズは被写体の形状を自然に再現できるので、ジュエリー撮影に効果的です。
広角レンズや標準レンズで近距離から撮影すると、レンズ特有のパースにより宝石や金具の形がゆがみ、実物と少し異なる印象になってしまうことがあります。特にマクロ撮影でゆがみが目立つと高級感や精密さが損なわれ、写真のクオリティが下がってしまいます。
望遠レンズは撮影距離を確保しながら被写体を大きく写せるため、形の正確さとバランスを維持できます。また背景のボケ感が強まることで、主役のジュエリーが際立つのも利点です。
7. 宝石部分にピントを合わせる
ジュエリー撮影では、最も注目が集まる宝石部分に確実にピントを合わせましょう。
輝きやカット面のディテールは商品撮影をする上で魅力を伝える最大の要素です。ここがぼやけると透明感や光の反射が弱まり、高級感が損なわれます。特にマクロ撮影では被写界深度が浅く、数ミリのズレでも印象が変わります。
撮影時は宝石の中心や光を反射する面など、最も美しく見える位置を狙い、チェーンや台座があっても視線が自然と宝石に集まる構図を意識しましょう。
8. マニュアルフォーカスで細かく調整する
宝石部分に正確にピントを合わせるためには、マニュアルフォーカスが有効です。
オートフォーカスは宝石の反射や金属部分の輝きに惑わされ、狙った位置から外れることがあります。マニュアルなら、狙ったカット面や反射部分にピンポイントで合わせられます。
撮影時はライブビューの拡大表示を活用し、ピントの山を見極めながら微調整しましょう。
9. 自然光や柔らかい照明を活用する
被写体を魅力的かつ正確に反映した写真に仕上げるには、光の質にこだわりましょう。
自然光や柔らかい照明を使うことで、宝石の色味や金属の質感を忠実に再現しつつ、影や反射を穏やかにできます。直射日光や強すぎるライトはコントラストが強くなり、宝石の輝きが白く飛んだり、金属部分に不要なギラつきが出たりします。
窓際の間接光やディフューザーを通した柔らかいライトは、細部まで均一に光を届け、落ち着いた高級感を演出します。また、自然光は色温度が安定しており、後処理での色補正が少なくて済む点もメリットです。
撮影時は宝石の輝きが最も美しく見える角度を探し、光源との距離や高さを微調整しましょう。光を味方につけることは、ジュエリーの魅力を最大限に引き出す近道です。
10. アクリル板や無反射ガラスで映り込みを減らす
アクリル板や無反射ガラスを活用することで、写真の質を下げる要因となる金属や宝石への映り込みを防ぐことができます。
アクリル板は透明度が高く、背景や下地との組み合わせで立体感や浮遊感を演出できます。一方、無反射ガラスは光の反射を抑える特殊加工が施されており、カメラや周囲の映り込みを大幅に軽減できます。特にマクロ撮影では、小さな映り込みも目立つため、こうした素材を使うことで後処理の手間を減らし、撮影段階で不要な映り込みのない美しい仕上がりを実現できます。
11. トレーシングペーパーやユポ紙で光を拡散する
ジュエリーの物撮りでは、光の当たり方が強すぎると宝石や金属部分にギラつきや影が生まれ、質感や色味が損なわれます。そこで活躍するのが、トレーシングペーパーやユポ紙などの拡散素材です。
光源の前に設置するだけで光が柔らかく広がり、反射やハイライトがなめらかになります。特に透明感のある宝石は、光を拡散することで色の深みや輝きが均一に表現され、写真全体が落ち着いた印象になります。ユポ紙は耐久性が高く、屋外や長時間の撮影にも向いているのも利点です。
撮影段階で光をコントロールすることで、後からのレタッチで反射を消す手間を減らし、商品の魅力をそのまま伝える美しい仕上がりを実現できます。
12. 異なる角度から写真を撮る
さまざまな角度で撮影されたジュエリー写真は、購入を検討している顧客に安心感と信頼を与えます。
商品ページに参考となる写真を複数枚用意しておくことで、顧客はジュエリーの細部や質感、特徴をじっくり確認できるため、満足した状態での購入につながります。撮影は1〜2枚で終わらせず、正面・側面・背面に加え、宝石や金具のクローズアップ、着用イメージなども撮影しておきましょう。
異なる角度や距離から撮影することで、写真だけでも商品の全体像が伝わり、オンライン販売でも実物を手に取ったような安心感を提供できます。画像のバリエーションを増やすことは、購入意欲を高め、コンバージョン率の向上につながる有効な手段です。
13. 撮影後は写真をレタッチして仕上げる
商品の魅力を正確かつ最大限に伝えられるようなレタッチを心がげましょう。写真の精度や鮮明さは、オンライン販売における商品の印象を大きく左右します。
不自然な加工や粗い編集は、かえって信頼を損ない、購買意欲を下げる原因になります。撮影後は写真編集ソフトを使い、色相・彩度・露出・ホワイトバランスを整え、不要な反射やグレア、傷や埃を除去しましょう。
画像のシャープ化で細部をくっきり見せ、必要に応じてドロップシャドウを加えることで、白背景でも立体感が生まれます。また、トリミングや余白、製品位置を統一するためのテンプレートを用意すると、全体の一貫性が保たれます。
編集スキルや時間がない場合は、ポストプロダクション会社に依頼するのも有効です。適切なレタッチで、商品の魅力を最大限に引き出しましょう。
ジュエリー写真撮影に必要な機材

カメラ
ジュエリー撮影におすすめのカメラは、ミラーレスカメラやデジタル一眼レフです。高解像度モデルを選び、マクロ撮影用レンズを活用することで、細部まで鮮明な写真を撮ることができます。
三脚
手持ち撮影ではわずかな揺れでも写真がぶれ、細部の鮮明さが失われます。三脚は効果的にカメラを安定させ、画質と構図の一貫性を高めてくれる、便利な撮影アイテムです。適切な絞り値やISO感度を設定しやすいだけでなく、床に三脚の位置をマーキングしておけば、別日でも同じ構図を簡単に再現できます。
照明アクセサリー
ジュエリー撮影で柔らかい光を演出するには、ソフトボックスやディフューザーを活用しましょう。自然光が使えない場合でも、こういったツールを使うことで光を拡散させ、影や反射を抑えて落ち着いた雰囲気に仕上げることができます。
テーブル
幅60〜70cm程度の標準的な折りたたみテーブルが便利です。背景や照明の位置調整がしやすく、省スペースでも撮影環境を整えられます。
白い背景
白い背景紙ロールやライトボックスを使えば、安価で一貫性のある背景が作れます。特にジュエリーの撮影ボックスは、背景と照明を同時に整えられるため、初心者でもプロ品質に近い写真を撮影しやすくなります。
フォームボード
撮影時、光が当たらない側は影で暗くなりがちです。白いフォームボードを影側に置くと光が反射し、全体を明るく均一に照らせます。これにより、宝石や金属部分の質感がよりはっきりと表現されます。
スマホを使ったジュエリー写真の撮り方

スマートフォンでも工夫次第で、ジュエリーの輝きや質感をしっかりと引き出すことができます。安定した撮影環境や適切な設定を整えることで、高価なカメラに劣らない美しい写真が撮れます。
スマートフォンでのジュエリー撮影では、次のポイントを抑えることでプロフェッショナルな写真に仕上げることができます。
- ミニ三脚を使用する:カメラを安定させて手ブレを防ぎ、構図を一定に保つ
- ポートレートモードを使ってみる:背景を自然にぼかし、ジュエリーの立体感と高級感を演出する
- 背面レンズを使用する:高画質な背面レンズで細部まで鮮明に撮影する
- 適切なホワイトバランスと露出を設定する:宝石や金属の色味を正確に表現する
- カメラ設定をロックする:撮影中に設定が変わらないよう固定し、一貫した明るさと色味を保つ
スマホでジュエリーをきれいに撮るには、カメラをしっかり固定することと撮影前に適切な設定を整えることが大切です。ミニ三脚で手ブレを防ぎ、背面レンズやポートレートモードで被写体を引き立てましょう。
また、ホワイトバランスや露出を整えて設定すれば、何枚撮っても明るさや色合いがそろった写真になります。
避けるべき一般的なジュエリー撮影ミス3選

反射が多すぎる
宝石や金属の撮影では、不要な映り込みや反射が発生しがちです。反射が強すぎると、顧客はフォトグラファーの影や周囲の映り込みを商品の欠陥と勘違いする可能性があります。特に金属のジュエリーは難易度が高いため、上からの照明を2灯使うなど、光源の配置を工夫して反射を最小限に抑えましょう。
背景に凝りすぎる
白い背景を「退屈」と感じ、カラフルで派手な背景を使いたくなるかもしれませんが、商品ページでは逆効果です。白や薄いグレーの背景は、商品の魅力を際立たせ、編集も容易なため、Amazon(アマゾン)やeBay(イーベイ)など多くのECマーケットプレイスで推奨されています。黒背景も人気ですが、利用できないマーケットプレイスもあるため注意が必要です。背景紙ロールやライトボックスを使えば、安価で一貫性のある背景が作れます。
小道具の使いすぎ
小道具は場合によっては効果的ですが、商品ページでは視線をそらす原因になります。ジュエリー写真は、ブランドの一貫性と商品のディテールを伝えることが第一です。小道具は雑誌の表紙やバナーなどブランディング用のエディトリアル撮影に限定し、商品ページでは極力シンプルに仕上げましょう。
まとめ
優れたオンラインジュエリーストアに共通しているのは、魅力的で高品質な商品写真です。商品のありのままの姿を正確に伝えながら、その魅力を最大限に引き出す仕上がりを目指すことで、販売促進だけでなく、ブランド構築にもつながります。
経験を重ねることで撮影の幅は広がり、よりクリエイティブな表現も可能になります。まずは基本を押さえ、シンプルかつ正確にジュエリーを表現することから始めましょう。高品質な写真への投資は、売上や収益の向上、そして信頼されるブランドの確立という成果をもたらします。
ジュエリー写真撮影に関するFAQ
ジュエリー撮影におすすめのカメラは?
ジュエリー撮影におすすめなのは、ミラーレスカメラやデジタル一眼レフカメラです。これらのカメラは高解像度モデルが多く、マニュアル撮影が可能で、マクロレンズも豊富に揃っているのが特徴です。
自宅でジュエリーを撮影するにはどうすればよいですか?
- テーブルと背景紙ロールを設置する
- 照明を配置する
- ジュエリーをスタイリングし配置する
- カメラを設定する
- 写真を撮る
- レタッチして仕上げる
ジュエリー写真に最適な照明は何ですか?
ジュエリー写真に適しているのは、柔らかい照明です。窓際で自然光を利用するか、ソフトボックスやディフューザーで人工光を拡散させれば、影がやわらぎ質感が際立ちます。カメラのフラッシュは光が強すぎて反射や白飛びを招くため避けましょう。
自然光でジュエリーを撮影する方法は?
窓際で撮影し、テーブルを窓に対して90度の位置に置くのが基本です。直射日光は影を強くするため、ディフューザーで光をやわらげます。ディフューザーがなければ、半透明のシャワーカーテンやクッキングペーパー、薄いシーツなど身近な素材で代用可能です。
文:Takumi Kitajima





