実店舗での商品販売では、商品の手触りやサイズ感、色などを実際に確認できますが、オンラインショッピングでは掲載されている商品写真から商品の特徴を知ることになります。そのため、さまざまな角度から撮影された画像や、詳細がわかる高画質の画像を掲載することが大切です。
必要な情報が伝わる写真を効率的に商品撮影するには、製品撮影の流れを確認するだけでなく必要な機材や撮影アイテムを揃え、EC撮影のコツを知ることが重要です。
そこでこの記事では、eコマースの商品撮影に必要なアイテムや編集ツール、100均で見つかる撮影小物について紹介します。
商品撮影に不可欠なアイテム

質の高い商品写真を撮影するには、慎重に機材選びを行う必要があります。カメラやレンズは画像の質に直結するため、予算を集中させることも検討しましょう。小物や背景_照明などのアクセサリー類は、セリアやダイソーなどの100均を活用することで、節約しながら撮影キットを準備できます。
一般的に商品撮影に不可欠な機材は以下の通りです。
カメラ
カメラは、商品撮影の基盤となるアイテムです。Canon(キヤノン)、富士フィルム、Nikon(ニコン)、Sony(ソニー)などの信頼できる大手メーカーのカメラ購入を検討しましょう。
スマートフォンで物撮りすることも可能ですが、一眼レフやミラーレスなどのカメラを使用すればより高画質な写真を撮影できます。メーカーが提供するブログ記事や動画などのチュートリアルを参考にすれば、本格的なカメラの初心者でも円滑に撮影できるでしょう。
カメラは、主に以下の2つに大別できます。
- フルフレーム:大きなセンサーを持ち、光を多くとりこめるため、被写体をよりクリアに表現できます。視野も広く、被写界深度(ピントの合う範囲)が浅いため、背景をぼかした写真撮影を行いたい場合にも最適です。一方で、価格が高い、本体のサイズやファイルサイズが大きいという特徴を持ちます。
- クロップセンサー:センサーが小さく、カメラ自体が軽量で持ち運びに便利です。焦点距離が縮小されることから望遠効果がえられるものの、広角撮影には不向きです。
どちらのカメラタイプも、高品質の写真を撮影するのに十分な能力が備わっています。フルフレームカメラは、ジュエリーやネイルチップのような小さな商品の細部を撮影するのに適しています。
商品撮影におすすめのカメラは以下の通りです。
Canon EOS R50
Canon EOS R50は比較的安価なクロップセンサーのカメラで、デジタル一眼レフの中でも軽量でコンパクトです。自動で複数の画像を合成する機能もあり、逆光シーンの撮影や被写体に寄った撮影でも、クリアな写真を撮影できます。スマホと無線接続もできるため、商品写真を手軽にSNSなどにアップすることも可能です。
Nikon Z5
Nikon Z5は中価格帯のフルフレームのミラーレスカメラです。SDカードのダブルスロット対応で大量の画像をバックアップ可能です。有効画素数は2432万画素で、商品の質感や色を忠実に再現できるのが特徴です。
Fujifilm X-T5
小型で軽量なFujifilm X-T5は、画素数4020万画素と高解像で、富士フィルムが独自開発したX-Trans CMOSというカラーフィルター配列を採用しています。ISO感度やシャッタースピード、露出補正のダイヤルを本体に搭載しているため、ファインダーをのぞく前に設定確認できるため、スムーズな撮影が可能です。
レンズ
商品撮影には、焦点距離50mmから200mmの範囲の単焦点レンズ(焦点距離が固定されたレンズ)を選ぶと良いでしょう。特に50mmは一般的な商品撮影に最も適しています。
焦点距離はカメラのセンサーとレンズの中心との距離で、被写界深度を決定する主な要因です。50mm未満のレンズは、商品に近づく必要があり、画像が歪むことがあります。一方、200mmを超えるレンズは、商品との距離を必要とし、撮影スペースが限られている場合には撮影が難しくなることがあります。
小さな被写体を撮影する場合に使うマクロレンズを使うことも可能です。マクロレンズは、撮影者と被写体との撮影距離を最小限に抑え、等倍または等倍に近い画像を撮影できるように設計されています。例えば、ピアスやリングなどの小さなアクセサリー商品の撮影の際、近くから撮影して小さな宝石や複雑なデザインを鮮明に見せることができます。
ニーズに合ったカメラを見つけたら、同じメーカーが製造したレンズを確認して互換性を確保しましょう。価格帯は、製造品質、絞り(レンズに入る光の量)、ガラスの品質によって異なります。
三脚
三脚は、水平な画像を撮影したり、位置調整を行ったりするためにも不可欠な撮影アイテムです。商品を中央に配置し、構図を固定してブレのない綺麗な写真を撮影することが可能となります。三脚を選ぶ際には、脚段数や耐荷重、カメラを固定する雲台のタイプなどを確認すると良いでしょう。
人気の三脚には、Manfrotto(マンフロット)の「Element」やポータブル三脚「PIXI」があります。
カメラ用リモコン
カメラ用リモコンを使用すると、シャッターボタンを押す際のブレを避けられます。一般的な商品の写真撮影に活用できるだけでなく、特にマクロレンズを使用した白背景の詳細な撮影を行う場合に活躍します。
「Pluto Trigger」などのさまざまなメーカーのカメラと互換性のある有線リモコンや、各メーカーのワイヤレスリモコン、100均のリモコンなどから、自分のカメラや予算に合ったものを撮影アイテムに追加しましょう。
外付けHDDまたはSSD
写真撮影には、大量のストレージと処理能力が必要です。画像の保存のためだけでなく、編集ソフトウェアを操作する上でも必要となるため、外付けHDD(ハードディスク)やSSD(ソリッドステートドライブ)に写真のバックアップを保存しましょう。
画像の保存とバックアップには2~5TBの容量があると安心です。
背景
商品の写真撮影に背景を使用することで、商品の魅力や詳細を引き出すことができます。背景にある物や色によって被写体の使用イメージを伝えたり、視線を商品に集中させたりすることも可能です。
撮影用に背景を整えれば、後から写真の背景を消す手間も発生しません。白やライトグレーのような単色を使用する場合は、大きなロール紙や白いシーツ、既製の白い背景を使用すれば手軽に撮影できます。
色付きの背景を選ぶ場合には、商品の色やイメージ、色彩心理を考慮する必要があります。例えば黒い背景は高級感や重厚感を表現することができ、反対にパステルカラーを使うとポップな印象の商品写真ができます。
ジュエリーなどの小さい商品を撮影する場合は、無地の箱を活用して作る簡易撮影ボックスがあると便利です。部屋の明るさや背景に左右されることなく、同じ環境で商品を撮影することが可能となり、統一感ある商品写真を撮れるでしょう。
撮影小物は100均でも十分揃うため、商品イメージや撮影したいシーンに合わせて数パターンの背景を用意するのも良いでしょう。
カメラ用ブロアー
カメラやレンズについたホコリや糸くずなどを吹き飛ばせるカメラ用ブロアーを用意しておきましょう。カメラ用ブロアーは撮影時の不純物を取り除くだけでなく、レンズやカメラ本体を掃除するのにも活用できます。
商品撮影用の照明機器

自然光で撮影する場合に必要なアイテム
- レフ板
自然光を使った商品撮影を行う際は、天候や時間帯によっても光の印象が変わるため、レフ板(リフレクター)を使って被写体にあたる光を調整します。柔らかい光をあてたい場合には白いレフ板を、強い光をあてたい場合は銀色のレフ板を使うと良いでしょう。
レフ板は100均などで購入できるほか、発泡スチロールの板(フォームボード)で代用したり、アルミシートとパネルで自作したりすることも可能です。
人工光で撮影する場合に必要なアイテム
- ストロボ:カメラに外付けして使用する発光装置で、シャッターと同時に光る仕組みになっています。
- 定常光:常に被写体を照らす照明で、LEDライトなどが使われます。光のあたり方を撮影前に確認でき、撮影場所の明るさや被写体に応じて調整可能です。
- レフ板:被写体に光をあてるために使う板で、陰影を和らげる目的でも使用されます。
- アンブレラ:傘の形状をしており、光を柔らかく拡散させるためのものです。写真の反射対策としても役立ちます。
なお、人工光で撮影する際は以下の「三点照明」に注意する必要があります。
- キーライト:商品に向かっている主光源で、一番明るいライトです。被写体の斜め45度から光があたるよう、高い位置に設置します。
- フィルライト:商品の影の部分を照らす光で、被写体の影を和らげます。キーライトの1/3~1/4程度の光の強さになるよう調整します。
- バックライト:商品の後ろからあてる光で、被写体の輪郭をはっきりさせるためのライトです。キーライトの1/2以上程度の強さに調整しますが、場合によってはキーライトより強くすることもあります。
商品写真の編集におすすめのツール
Adobe Photoshop(アドビフォトショップ)
プロも使用する画像編集ツールのAdobe Photoshop(アドビフォトショップ)は、豊富な機能を備えたソフトです。ワンクリックで背景の不要な要素を除去したり画像を塗りつぶしたりできるだけでなく、細かな加工や調整まで行えます。
価格:月額3,280円~(無料お試し期間あり)
Adobe Lightroom(アドビライトルーム)
Adobe Lightroom(アドビライトルーム)は、画像の明るさや影、背景ぼかしなどを手軽に行えるソフトです。生成AI削除機能を使うことで、画像内の不要な物を消すこともできます。写真を整理する機能もあることから、複数人で商品画像を管理する場合にも便利です。
価格:月額1,480円~(無料お試し期間あり)
PhotoDirector(フォトディレクター)
PhotoDirector(フォトディレクター)は、AIを活用した機能が豊富で、手振れ補正や不要物削除が簡単にできます。細かなレタッチや画像合成もできるため、大幅な編集を加えたい場合にも最適です。ウェブ版だけでなくスマホアプリもあり、無料版も用意されているため、機能を試してからサブスクプランに切り替えることも可能です。
価格:無料~
PIXLR(ピクセラ)
PIXLR(ピクセラ)は、ウェブ上で画像編集ができるサービスです。レタッチやエフェクト追加だけでなく、AIを使った背景除去やオブジェクト除去機能もあります。さらに、AI画像ジェネレーター機能もあり、画像編集以外にも幅広く活用できます。
価格:プラスプラン月額2.49ドル~(7日間の無料トライアルあり)
Clipping Magic(クリッピングマジック)
Clipping Magic(クリッピングマジック)は、背景の削除やエッジの調整、商品画像のブレ補正などができるよう特別に設計されたオンラインツールです。背景が利用できない場合や、不要な物が入り込んだ複雑な背景の場合に特に便利です。
価格:ライトプラン月額3.95ドル~(無料お試し期間あり)
まとめ
eコマースの商品撮影アイテムには、カメラやレンズだけでなく、カメラを固定するための三脚や遠隔でシャッターを切れるリモコン、背景や照明機材などがあります。さらに、画像を保存しておくためのHDDや機材のメンテナンスに使用するブロアーなどさまざまなアイテムが必要となります。中でもカメラは商品画像の質に直結する要素のため、予算やカメラの特徴を確認して購入を検討しましょう。
撮影を終えた商品写真は、PhotoshopやLightroomなどの画像編集ツールを使って調整を行います。商品ページデザインに合うよう色味やバランスを調整することで、より魅力的に商品を見せられるようになるでしょう。
撮影アイテムに関するよくある質問
商品写真の撮影に必要なアイテムは?
- レンズ
- 三脚
- カメラ用リモコン
- 外付けHDDまたはSSD
- 背景
- カメラ用ブロアー
- ストロボ
- 定常光
- レフ板
- アンブレラ
撮影キットはダイソーなどの100均で購入・自作できる?
撮影小物の多くはダイソーなどの100均で揃えられます。以下はその一例です。
- レフ板:レフ板として売っているものもありますが、アルミシートやコピー用紙を板に張ることで自作することも可能です。
- シャッターリモコン:主にスマホで使用でき、離れた場所からでもブレることなく撮影ができます。
- 三脚:さまざまなサイズの三脚やスタンドが購入できます。
- 背景:小物を撮影するための撮影ボックスや背景は、100均商品で自作したり代用したりできます。
商品撮影におすすめのカメラは?
- Canon EOS R50
- Nikon Z5
- Fujifilm X-T5
スマートフォンで商品撮影はできる?
スマートフォンでも商品撮影はできます。画素数の高い最新機種を選べば、一眼レフカメラで撮影したときのような高画質な画像を撮ることができるでしょう。撮影時にはホワイトバランス(色温度)や露出(撮影時の光の量)の設定を行う必要があります。
文:Masumi Murakami





