色は第一印象の9割を左右すると言われ、ブランドの印象やクリック率、コンバージョン率に強く影響します。ECサイトを成功に導くには、色彩心理学にもとづいた戦略的な色選びが重要です。色の特性を理解しうまく活用できれば、ブランドの魅力を効果的に伝え、購入を後押しすることができます。
この記事では、色彩心理学を元に、色が人の心理に与える影響、各色の意味、ブランドカラーの決め方、効果的なブランドカラーの実例などを紹介します。
色彩心理学とは

色彩心理学とは、色が人の感情や行動にどのような影響を与えるかを研究する学問です。私たちは日常の中で、意識しないうちに色から多くの影響を受けています。色の性質について理解を深めれば、色によって相手に与える印象を意図的に調整することもできます。
色彩心理学を理解すると、色を感覚ではなく戦略的に選べるようになり、より効果的なブランド構築や販売促進につながります。
色が人に与える影響

色彩心理学では、色が人に与える影響を主に次の4つに分類して考えます。
- 心理的な影響:色によって物事を認識しやすくなったり、記憶に残りやすくなったりすること
- 生理的な影響:色が神経や身体の反応に作用し、興奮状態に陥ったり、リラックスしやすくなったりすること
- 感情的な影響:色によって気分が明るくなったり、落ち着いたり、逆に不安になったりすること
- 文化的な影響:色の意味や受け取り方が、国や地域、文化によって異なること
マーケティングに色彩心理学を利用すると、こうした色の力を使って、商品やブランドの世界観を効果的に伝えられるほか、購買行動を後押しできます。
色彩心理学における各色の効果

赤
赤は強い刺激を与える色で、愛、情熱、活気、行動力を表します。心拍数を上げたり、緊急性を感じさせたりするため、セールや限定キャンペーンなど「すぐに行動してほしい」シーンに効果的です。ただし、使いすぎると圧迫感、攻撃性、警戒心といったネガティブな印象につながることがあります。
初期のカラーパレットが赤のShopifyテーマには、Ritualがあります。落ち着いた色合いの赤を基調とし、高級感が感じられるデザインです。
オレンジ
オレンジは親しみやすさ、活発さ、明るさ、社交性を感じさせる色です。元気で前向きな印象を与える一方、フォーマルな場面ではやや軽く見えることがあります。赤より柔らかく、黄色より落ち着きがあるため、フレンドリーなブランドづくりに向いています。
初期のカラーパレットがオレンジのShopifyテーマには、Paradeがあります。親しみやすさを演出できるポップなテーマです。
黄色
黄色は明るさ、希望、創造性、楽しさを感じさせる色です。視認性が高く、ワクワクする気持ちを生みやすい一方で、落ち着きに欠けたり、子どもっぽい印象になったりすることがあります。また、警告色として使われることもあるため、使いどころには注意が必要です。
初期のカラーパレットが黄色のShopifyテーマにはSenseがあります。淡い黄色を基調としたデザインで、フレッシュな印象を残すことができます。
緑
緑は自然、調和、安心感、安定を感じさせる色です。心を落ち着かせる働きがあります。環境や健康を連想させるため、ナチュラルな印象を大切にしたいブランドと相性が良いです。ただし、使い方によっては地味に見えたり、勢いに欠ける印象になったりすることもあります。
初期のカラーパレットが緑のShopifyテーマには、Brambleがあります。柔らかさを感じる緑色のテーマで、落ち着いた雰囲気のECサイトにぴったりです。
青
青は信頼、誠実さ、安心感、清潔感を感じさせる色です。心を落ち着かせ、リラックスさせる効果もあると言われています。ただし、使いすぎると冷たさや距離感が生じることがあるため、親しみを出したい場面では別の色と組み合わせると効果的です。
初期のカラーパレットが青のShopifyテーマには、Refreshがあります。深みのある青を基調とし、全体がすっきりとした印象のテーマです。
紫
紫は高貴さ、個性、神秘性、創造性を感じさせる色です。独自の世界観や高級感を演出しやすいので、非日常を訴求したいシーンにも向いています。一方で、使い方によっては奇抜に見え、メッセージが伝わりにくくなる場合があります。
初期のカラーパレットが紫のShopifyテーマには、Publisherがあります。淡い紫のグラデーションが採用されており、独創的な雰囲気を演出できます。
黒
黒は高級感、重厚感、洗練さ、力強さを感じさせる色です。シンプルで引き締まった印象になり、ブランドに強さや格を持たせたいときに効果的です。一方で、過度に使うと威圧感や暗さ、近寄りがたい印象につながることがあるため、他の色との組み合わせが重要になります。
初期のカラーパレットが黒のShopifyテーマには、Rideがあります。背景には黒色、アクセントカラーにはビビットな黄色が採用されており、力強さを感じるデザインです。
白
白は清潔感、軽さ、シンプルさ、新しさを感じさせる色です。余白を生み、クリーンで洗練されたデザインに向いています。ただし、使いすぎると情報が弱く見えたり、冷たく無機質な印象になったりするため、アクセントカラーを組み合わせるといいでしょう。
初期のカラーパレットが白のShopifyテーマには、Fabricがあります。全体を白でまとめたデザインで、洗練された印象を与えられます。
茶色
茶色は温かさ、安定感、素朴さ、落ち着きを感じさせる色です。自然素材や安心感を訴求したいシーンと相性が良く、ナチュラルで親しみやすい印象をつくることができます。使い方によっては地味なイメージや古いイメージを与えることがあるので注意が必要です。ブランドに落ち着きと信頼感を加えたいときに活用しましょう。
初期のカラーパレットが茶色のShopifyテーマには、Dwellがあります。深みのある茶色や淡い茶色が採用されたシンプルなデザインで、落ち着きを感じられます。
ピンク
ピンクは優しさ、柔らかさ、かわいらしさ、安心感を与える色です。親しみやすい印象を与える一方、濃いピンクはポップでアクティブな雰囲気にもなります。ただし、使い方によっては幼い印象になるほか、ターゲットが限定される可能性があります。
初期のカラーパレットがピンクのShopifyテーマには、Lollipopがあります。ポップでキュートな印象を演出したいネットショップにおすすめです。
水色
水色は、爽やかさ、清潔感、解放感を感じさせる色です。青よりも柔らかく、心理的な圧迫感が少ないのが特徴です。空や海を連想させるため、軽やかさや透明感を表現したいときと相性が良い色です。一方で、淡い色のため、強いメッセージを伝えたい場面では埋もれてしまうことがあります。
初期のカラーパレットが水色のShopifyテーマには、Energeticがあります。はっきりとした水色がアクセントになっている、鮮やかで活発な印象のデザインです。
灰色
灰色は中立性、落ち着き、洗練さ、バランスを感じさせる色です。主張しすぎない特性があり、上品で整った印象を与えたいときに向いています。ただし、使いすぎると無機質で暗い印象になるほか、冷たさや退屈さにつながる場合があります。
初期のカラーパレットが灰色のShopifyテーマには、Tradeがあります。ダークグレーや白、淡い茶色が採用されたデザインで、落ち着きのある印象を与えます。
色彩心理学を活用すべき理由

ブランド認知が向上する
ブランドカラーを適切に設定すると、ブランドと色が記憶として結びつき、ブランド認知度の向上が期待できます。たとえば、赤色のブランドと聞けばコカ・コーラを連想する人が多くいるでしょう。色は視覚的な識別を助ける効果があるため、ブランドの世界観を表現する色を一貫して使用することで、競合との差別化を図れます。
また、色は脳が情報を処理するスピードにも影響し、色による視覚情報は無彩色よりも早く処理されると言われています。そのため適切にブランドカラーを設定できれば、色を手がかりに商品やブランドが想起されやすくなり、購入の意思決定もスムーズになります。
重要な情報に注目を集められる
適切に色を使うと、大切な情報を自然と強調でき、見せたい部分に視線を集めることができます。
割引率、送料無料、期間限定などを目立つ色で示すだけで、ユーザーの視線が誘導され、離脱を減らす効果があります。余白や箇条書きと組み合わせると、情報がさらに理解しやすくなります。
ターゲット層に効果的にアプローチできる
ターゲットとなる年齢層を考慮して配色することで、効果的にターゲット層に商品やブランドをアピールできます。
たとえば、若年層であれば活気のあるポップな色合いを好む傾向があるのに対し、30代以降の消費者の場合は洗練された色に好反応を見せる傾向があります。また、B2Bでは誠実さや信頼感を表現できる、青やグレーなど、落ち着いた色味が採用されるケースが多いです。
こうした特性を活かして色彩戦略を立てることで、コンバージョン率の向上や購買意欲の促進を図ることができます。
ブランドカラーを設定する5つの手順

1. ブランドの性格(ブランドパーソナリティ)を言語化する
まずは、ブランドを「人」に見立てて、その性格を言語化します。これはブランドアイデンティティを明確にするプロセスでもあります。
たとえば次のような軸で考えると、色の方向性が一気に絞りやすくなります。
- 落ち着いている/活発で元気
- 信頼性がある/遊び心がある
- 高級・洗練/カジュアル・親しみやすい
- ナチュラル/都会的
- 温かい/クール
ブランドの個性を言語化できると、自然と世界観を表現できる色が見えてきます。たとえば、落ち着いていて信頼性があり、親しみやすく、ナチュラルで暖かい印象なら、緑や茶色がメインカラーの候補にあがってくるはずです。
2. ターゲットの好みや価値観を考える
次にターゲット層の属性を基にどのような色が適しているのかを分析しましょう。
色の受け取り方は、文化、性別、年代、背景によって変わります。ターゲットユーザーの価値観を考えることで、使うべき色や避けるべき色がわかります。たとえば、高所得者層をターゲットにしたシックな高価格帯商品であれば、白、黒、ネイビーなどの落ち着いた色が好まれやすい傾向にあります。
また、文化的背景や用途によって適さない色もあります。たとえば、日本では黒が喪のイメージと結びつきやすいため、ウェディング関連のブランドで黒をメインにすると違和感を与える可能性があります。ターゲットの文化・価値観をふまえた色選びが大切です。
3. 競合ブランドのカラーを調べて差別化する
競合がどんな色を使っているかを把握すると、差別化すべきポイントが見えてきます。そのまま同じ色を採用すると埋もれてしまうケースもあるため、競合分析は欠かせません。同業種が青を使っているなら、あえて緑・紫などで世界観を変える、定番カラーが決まっている業界なら、色のトーンを変えてみるなど、手段はさまざまです。
特にロゴやブランドカラーは、隣に並べられたときに一目で印象に違いが出るため、他社と被らないカラープランが大きな強みになります。
4. メインカラー・サブカラー・アクセントカラーを決める
使用する色が絞れたら、次に色の使い方を決めます。ブランドカラーは1色だけで完結する場合もありますが、ウェブサイトやバナーなどの実際の運用では、複数の色を組み合わせることで視認性が上がり、デザイン全体に一貫性を持たせやすくなることがあります。
用途に応じて色を役割分担したカラースキームをつくると、ユーザーにとって見やすくわかりやすいデザインになります。次のように分けて考えると効果的です。
- メインカラー:ブランドを象徴する中心の色
- サブカラー:メインカラーを補強する色。背景や装飾に使う色
- アクセントカラー:ボタンや強調に使い視線誘導する色
アクセントカラーは、メインカラーとコントラストをつけることで、ボタンのクリック率向上につながります。
5. テストをして実際のユーザー反応を見ながら調整する
カラースキームが完成したら、実際にECサイトに反映させ、ユーザーの反応を確認しましょう。
特にECでは、ランディングページの背景色や購入ボタン、バナーの色を変えるだけで成果が変わることもあるため、A/Bテストを活用するのがおすすめです。たとえば、CTAボタンの色を変えたらクリック率が改善するかなど、検証しながらブランドにあった色を探すことが重要です。
マーケティングにおける色彩心理学の例
ユニクロ
ユニクロのロゴは視認性が高く行動を促す赤を採用しています。赤の「活気」「行動力」というイメージがミニマルなデザインと結びつき、シンプルで機能的なブランドという印象を強めています。ECでも赤がアクセントカラーとして使用されており、ユーザーの視線を自然に誘導しています。
セブン-イレブン
緑・オレンジ・赤を組み合わせたセブン-イレブンのロゴは、緑が安心、オレンジが親しみ、赤が行動を象徴しています。日常的に立ち寄りやすいコンビニとしての印象を色の組み合わせでわかりやすく表現しています。
ソニー
ソニーは黒を基調にすることで堅実な技術力と、洗練された高級感を表現しています。黒は家電やガジェット分野と相性が良く、ブランドのプロフェッショナルな世界観を視覚的に強化しています。
無印良品
無印良品のダークブラウンのロゴは、自然さ、素朴さ、落ち着きを感じさせる色です。本質的な価値を大切にするブランド哲学と調和し、白との組み合わせでナチュラルな世界観を一貫して演出しています。
まとめ
色は、ユーザーの感情だけでなく、ブランド認知、クリック率、購入率といったECの成果にも直結する重要な要素です。色彩心理学を理解すると、ストアのデザインを「なんとなくの印象」ではなく、意図を持って最適化できるようになります。
Shopifyでは、テーマ設定やカスタマイズ機能を使って、ブランドカラーの統一、アクセントカラーによる視線誘導、A/Bテストによる改善などを手軽に実践できます。色を戦略的に使うことで、商品ページの魅力を引き上げ、購入につながる導線をつくることができます。
色彩心理学を味方につけて、ブランドらしさの伝わるECストアを構築していきましょう。
色彩心理学に関するよくある質問
色彩心理学に関する資格にはどのようなものがある?
- カラーコーディネーター検定試験(色彩検定)
- カラーデザイン検定
- 色彩能力検定
- カラーセラピスト資格
- 色彩心理アドバイザー資格
- パーソナルカラーアナリスト資格
- カラーコンサルタント資格
- カラー心理カウンセラー資格
そのほか、デザインや照明などの分野でも、色彩心理学に関わる資格は多くあります。
Shopifyテーマのカラーは変更できる?
Shopifyテーマでは、背景、ボタン、テキスト、リンクなどの色を、元のテーマから変更して細かく調整できます。テーマによっては、ブランドカラーに合わせてカラーパレットが自動生成されるものや、ボタン、バナー、セクションなどで色を個別設定できるものもあります。
カラーのA/Bテストで試すべき変更は?
- 購入ボタンの色
- ヘッダーの色
- 割引や送料無料など重要な情報の文字色
- 背景色
文:Taeko Adachi





