ECサイトを訪れたユーザーが目にするのは、サイトのデザイン、商品の画像や説明ですが、その裏側ではCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)が複雑な取引処理や在庫管理をサポートしています。CMSにはさまざまな種類があり、ショッピング特有の機能が求められるECサイトの構築とその運営においては、ECサイトに特化したCMSが非常に便利です。
この記事では、ECサイト用CMSの概要とメリット、おすすめのECサイト構築プラットフォーム7つを紹介します。
ECサイト用CMSとは

ECサイト用のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)とは、ECサイトに特化したCMSです。
CMSとは、ウェブサイトを構築・管理するためのシステムのことです。ECサイトは通常のウェブサイトと比較して、決済や在庫管理、顧客とのやり取りの記録など、さまざまな機能が求められます。ECサイトの構築には、ECサイト用CMSを利用すると、ショッピングカートや決済、配送管理など、ECに必須の機能を簡単に実装することができ、ECサイトを複数のユーザーで同時に管理できるようになります。
ECサイト用CMSには、次の2つのタイプがあります。
SaaS(サース/サーズ)型
SaaS型CMSは、定額料金を支払うことで、インターネット上でウェブサイトが作れるCMSです。CMSの提供元がクラウド上でホストしており、セキュリティ対策や定期的なアップデートを行ってくれます。管理画面からログインするだけで使用することができ、導入や運用に専門知識は不要です。
オープンソース型
無料でダウンロードしてカスタマイズできるCMSです。商用・非商用を問わず誰でも利用できますが、希望通りにカスタマイズするには高度な技術的知識が求められます。
ECサイト構築でCMSを利用するメリット

専門知識がなくてもカスタマイズや在庫管理がしやすい
CMSを利用すれば、ECサイトのデザインのカスタマイズ、商品の追加や在庫の更新、注文の処理などを簡単に行うことができます。ストアの管理や設定を行うためのダッシュボードは、専門知識がなくても直感的に操作できるように工夫されています。ヘルプメニューやFAQが充実しているものを選べば、日々の運営にかかる手間を削減し、最も重要なビジネスの拡大に時間を割くことができます。
他のツールやシステムと連携して機能拡張ができる
決済ゲートウェイや、CRM(顧客関係管理)ソフトウェア、在庫管理ソフトウェアなど、さまざまツールやシステムと連携して、ECサイトの機能を拡張することができます。ニーズに応じて適切なツールやシステムを連携することで、運営効率を向上させることができます。
SEO対策ツールを活用できる
ECサイト向けのCMSにはSEO対策ツールが組み込まれていることが多く、サイトを検索エンジンの上位に表示できるように、商品説明や画像、その他のコンテンツを簡単に最適化できます。サイト内の各ページのURL構造を整理し、サイトマップをつくり、メタタグをつけることも簡単にできるので、検索ページで潜在顧客に見つけてもらいやすくなります。
カスタマーサポートが受けられる
サポート体制がしっかりしているCMSを利用することで、機能を最大限に活用するための操作や設定を教えてもらうこともでき、スムーズにストアを運営できます。またECサイトに技術的な問題が発生した場合にも、専門的なサポートを受けることができればサイトのダウンタイムを最小限に抑えられます。
ホスティングサービスも利用できることが多い
ECサイト向けのCMSでは、多くの場合、ホスティングが付帯しています。ホスティングとは、サイトのデータやファイルを保存し、サイトを稼働させるサーバーを確保することです。主に「マネージドホスティング」と「セルフホスティング」の2つがあります。
マネージドホスティングでは、環境やセキュリティの管理、サーバーのメンテナンスをプロバイダーが行ってくれます。技術的な作業をプロバイダーに任せられるので、使いやすく管理が簡単というメリットがある一方で、カスタマイズ性に制限があったり、コストが高くなったりする傾向があります。
セルフホスティングでは、自社で用意したサーバーを使います。サイトのデザインや決済ゲートウェイなどの機能を自由に設定でき、すべての管理を自社で行うことができますが、高度なスキルが必要になります。
ホスティングの選択は、ネットショップの開業で直面する最初の壁のひとつです。マネージドホスティングが付帯している場合は、設定に悩むことなくストアをオープンできます。
おすすめのECサイト用CMSプラットフォーム7選

1. Shopify

Shopify(ショッピファイ)は、SaaS型でクラウドベースのECサイト用CMSを提供しているサービスです。自社でサーバーのメンテナンスやアップデートを行う必要がなく、ビジネスの拡大に集中できます。使いやすいプラットフォームであるため、始めたばかりの小規模ネットショップにも適している一方で、拡張性にも優れており大規模事業者にも対応しています。また、幅広いオンライン決済サービスを導入できるので、国内向けECサイトはもちろん、越境ECを目指す方にもおすすめです。
主な特徴
- オムニチャネル戦略を実現できる:パソコンやモバイルからのアクセス、SNSなどの外部アプリを通じたオンライン販売、実店舗での販売まで、複数チャネルでの販売を連携させて一元管理できる、オムニチャネル戦略をとることができます。
- 規模に応じて拡張できる:サイトへの訪問数が増加したり、売上が増えたりしても、それに応じてサイトを拡張することができます。事業の規模が変わっても、パフォーマンスを損なうことなくサイトを稼働させ続けられます。
- カスタマイズの自由度が高い:カスタマイズできる部分が多く、事業に合わせてストアフロントやバックエンドシステムを調整できます。カスタマイズの幅が広いだけではなく、APIを活用して外部サービスと連携することもできるので、多様な機能を実装することが可能です。
料金
- Basic:月額換算3,650円(税込)
- Grow:月額換算10,100円(税込)
- Advanced:月額換算44,000円(税込)
- Plus:月額換算$2,300(税込) ※1年または3年契約で利用可能
2. EC-CUBE

EC-CUBE(イーシーキューブ)は、日本発のオープンソース型CMSで、自由にカスタマイズできる高い柔軟性が特徴です。オープンソースであるため、開発者コミュニティを通じてさまざまなプラグインやテーマが提供されています。高度なカスタマイズが必要な場合には、自社で開発する以外にも、開発・運用を得意とするパートナー企業に依頼することも可能です。
主な特徴
- 豊富なプラグイン:EC-CUBEは多くのプラグインやテーマが用意されています。
- 活発なコミュニティ:公式サイトや開発者コミュニティ、専門のパートナー企業からのサポートが充実しています。
料金
EC-CUBE自体は、オープンソースで無料で利用可能です。カスタマイズやメンテナンス費用については、要件により異なります。
3. Adobe Commerce

Adobe Commerce(アドビ・コマース)は、B2BおよびB2Cの双方で、パーソナライズした顧客体験を提供するためのECサイト用CMSです。AI(人工知能)を活用し、顧客の購入履歴やよく同時に購入される商品、似た商品などの視点で最適化されたレコメンドやカテゴリーページの調整を行うことができます。また、生成AIによるコンテンツの作成やA/Bテストも可能です。1時間に20万件の注文を処理できる拡張性も備えた、大企業向けのCMSです。
主な特徴
- AIを活用したパーソナライズ:AIを活用して、買い物客ごとの行動やトレンド、購入商品の類似性などを分析し、商品をおすすめできます。
- 大規模ビジネスに対応できる拡張性:自動スケーリング機能により、膨大な注文を処理できる性能を備えています。また、複数のサイトやブランド、国・地域をまたいだビジネスでも、商品ラインナップや在庫を一元的に管理することができます。
- Adobe製品との連携で高度な分析が可能:解析ツールであるAdobe Experience Cloud(エクスペリエンスクラウド)などとデータを統合することもできます。より高度で詳細な分析に基づき、ユーザー体験の最適化や、顧客特性の理解を進めることができます。
料金
価格については、ウェブサイトのフォームから問い合わせが必要です。オープンソース版のMagento(マジェント)は無料で使用できますが、こちらはサポートがついていないので注意してください。
4. makeshop

makeshop(メイクショップ)は、国内発のSaaS型のEC向けCMSです。初めてオンラインショップを運営する人から企業まで、幅広く利用されています。他のサービスと比較すると初期費用が必要となりますが、クーポンの発行やポイント機能、レビュー機能、カレンダー表示、在庫アラートなど、多くのサービスで有料オプションとなっているものも含めた600以上の機能を基本料金で利用できます。
主な特徴
- テンプレート0円:すべてのテンプレートを追加料金なしで利用できます。
- 国内流通総額1位:日本では導入実績が12,000社以上あり、12年連続でEC構築SaaS業界での流通総額第1位を獲得しています。
料金
- プレミアムプラン:初期費用11,000円、月額13,750円、SSL証明書は年間13,200円
- エンタープライズプラン:初期費用11,000円~、月額55,000円~
5. Wix

Wix(ウィックス)は、使いやすいドラッグ&ドロップのインターフェースが特徴で、世界的にも広く利用されているウェブサイトビルダーです。ECに特化しているわけではありませんが、ECの機能も組み込むことができます。豊富なデザインテンプレートがあり、深い技術的ノウハウやデザインの専門知識がなくても魅力的なネットショップを構築することができます。
主な特徴
- 直感的な操作:ドラッグ&ドロップで、視覚的にECストアをデザインできます。
- 豊富なテンプレート:プロがデザインしたECサイト向けのテンプレートが用意されており、魅力的なオンラインストアフロントをすばやく構築できます。
- サイト作成無料:サイトの作成自体は無料です。月額契約をすることで販売を開始できます。
料金
- パーソナル:月額1,300円(税込)
- スモールビジネス:月額2,300円(税込)
- ビジネス:月額2,700円(税込)
- ビジネスプライム:月額13,500円(税込)
6. STORES

STORES(ストアーズ)は、手軽にECサイトが作れるサービスで、スマホからでも簡単にショップを開設できます。通常の商品販売だけでなく、予約販売や定期販売などさまざまな販売方法にも対応しているため、将来的に販売形態が変わる可能性があるビジネスにも最適です。フリープランの場合、月額固定費は無料、決済手数料のみで利用できるため、初めてのECサイトの場合も低リスクで始められます。スタンダードプランを使えば、ECサイトだけでなくキャッシュレス決済やPOSレジ、請求書あと払いのサービスも利用できます。
主な特徴
低リスク:フリープランなら商品が売れなければ料金が発生せず低リスクにECショップを開設できます。
販売手段が豊富:通常の販売に加えて、予約販売や定期販売、電子チケット、デジタルコンテンツ販売にも対応できます。
料金
- フリープラン:月額0円、決済手数料5.5%〜
- ベーシックプラン:月額2,980円(税込)、決済手数料3.6%〜
- スタンダードプラン:月額3,300円(税込)決済手数料対面の場合は1.98%~、オンラインの場合は3.6%~
7. WordPress

WordPress(ワードプレス)は、ブログや企業のウェブサイトを作るのに使用されるオープンソース型CMSで、プラグインを使うことで手軽にECサイトとしても使用できます。すでに自社サイトやブログを運営している場合、既存サイトにEC機能を付け加える形でネットショップを開設できます。WordPressをECサイト化できるプラグインは主に以下の2つがあります。
Shopifyの購入ボタン(Buy Button)

購入ボタン(Buy Button)はWordPressサイトに設置できるプラグインです。このプラグインを活用すれば、Shopifyと連携したカート機能や商品詳細の表示機能を追加できます。既存サイトにShopifyの決済機能や在庫管理機能を利用できるので、新しいECサイトを立ち上げる手間が不要となります。利用料金はShopifyのプランに含まれているため、追加費用も発生しません。
Welcart

Welcart(ウェルカート)は、国内ECプラグインでシェアNo.1で、既存・新規WordPressサイトにプラグインをインストールすることでECサイトとして使用ができるようになります。オープンソースのプラグインのため、自社で運営・管理ができればコストを抑えて運営を行うことも可能です。
主な特徴
- サイトとECショップの一元化:ブログや企業サイトとECショップを一括で管理できます。
- 費用を抑えられる:オープンソースのプラグインで、自分でカスタマイズや運営・管理ができればコストを抑えられます。
料金
- プラグイン:無料
- Welcartクラウド:コンサルティングからメンテナンス、セキュリティーなどのサービスが受けられ、アクセス数ごとに料金が変動します。
ECサイト用CMSプラットフォームを選ぶ際の注意点
必要な機能が備わっているか
商品の追加や販売、決済機能といった基本機能を始め、マーケティングや顧客管理に関する機能、他サービスとの連携など、自社が必要とする機能が備わっているかを確認します。CMSを使用し始めてから新たに機能を追加するには、専門家に依頼したり、CMSとは別のサービスを使わなければならない場合もあります。また、商品数が増えても対応できるか、他言語化や越境ECにも対応しているかなど、ビジネスの成長に合わせて機能を拡張できるかも確認しましょう。
セキュリティ対策は十分か
CMSを選ぶ際にとても重要なのは、セキュリティ対策が十分されているかという点です。特にオープンソースは、誰でもソースコードを見ることができるため、脆弱性を攻撃手段として利用されやすい傾向にあります。そのため、常に最新のリスク情報を把握し、自社や専門業者によるセキュリティ対策を施していくことが必要となります。
一方Saasの場合、ソースコードは公開されておらず、CMSも自動で定期的にアップデートされます。サービス会社がセキュリティチェックを定期的に行っていたり、対策がすでに行われていたりと、セキュリティ面においては比較的安心と言えるでしょう。
どちらのタイプを選ぶ場合でも、どのようなセキュリティ対策が行われているか、また万が一トラブルが怒った際のサポート体制は整っているかを確認することをおすすめします。
まとめ
EC事業の立ち上げを目指す人にとって、ECサイト用CMSはとても便利なツールです。ECサイト用CMSを導入することで、専門的な知識がなくても、デザインをカスタマイズしたり、在庫管理や決済機能を導入することができ、スムーズにECサイトを運営できます。SEO対策や他のシステムとの連携ができるだけでなく、サポートも受けられるので、初めての方でも安心してネットショップを始められます。
ShopifyなどのECサイト構築プラットフォームは、初心者から大規模事業者まで、幅広いニーズに応じた機能を提供しています。ECサイト用CMSを活用して、あなたらしいネットショップをつくりましょう。
ECサイト向けCMSについてのよくある質問
CMSとは?
CMSとは、ウェブサイトを構築・管理するためのシステムを指します。ウェブサイトのコンテンツを簡単に管理できるように設計されており、複数のユーザーが同時にコンテンツを操作できる機能を提供します。
ShopifyはCMSですか?
はい。Shopifyは、ECサイトに特化したCMSです。
ECサイト向けCMSのメリットは?
- 専門知識がなくてもカスタマイズや在庫管理がしやすい
- 他のツールやシステムと連携して機能拡張ができる
- SEO対策ツールを活用できる
- カスタマーサポートが受けられる
- ホスティングサービスも利用できることが多い
文:Masumi Murakami





