エンタープライズは主にビジネスやIT業界で使われる言葉で、日本では大規模な企業を指すケースが一般的です。日本の会社形態には主に4種類ありますが、エンタープライズ企業の多くは株式会社として運営されています。
この記事では、エンタープライズの定義やSMBとの違い、特徴や具体的な企業例を解説します。
エンタープライズとは

エンタープライズとは、一般的に従業員数が1,000人以上、売上が数百億〜数兆円にのぼる大規模な企業や組織のことです。官公庁や公共機関などもエンタープライズに含まれます。
エンタープライズとSMBの違い

エンタープライズが大企業を指すのに対し、SMB(Small and Medium Business)は中小企業を指し、スモールビジネスと中規模ビジネスの企業が含まれます。この2つは、従業員数や事業構造、資金力などに違いがあります。
エンタープライズ
- 従業員数:1,000人以上
- 事業構造:多角的
- 資金力:数百億〜
SMB
- 従業員数:リテール(小売業)で50人以下、卸売業・サービス業で100人以下、製造業で300人以下
- 事業構造:特定の分野に特化
- 資金力:少ない
エンタープライズに比べて、SMBは資金不足であることが多いため、大企業のように複数の事業を展開することは難しいという特徴があります。マーケティングにおいても、限られた予算内で投資収益率(ROI)の高い広告のみに絞って行うケースが一般的です。
エンタープライズ企業の特徴

規模が大きく資金力がある
エンタープライズ企業の最大の特徴は規模感と資金力です。従業員数は1,000人を超えており、三井物産やNTTなどの日本を代表する企業では数万人の従業員を抱えています。また、規模が大きなことから国内各地に支店や子会社があり、さらに海外にも多数の拠点を構えるなど、グローバルに事業を展開しているケースが多いです。
資金力は数百億から数兆円規模で、新規事業への参入、大規模なM&A、先端的な研究開発などに積極的に投資することが可能です。
複数の事業を展開している
エンタープライズ企業は、特定の分野に特化するのではなく、複数の事業を同時に展開する多角化経営を特徴としています。たとえば、トヨタ自動車は自動車関連事業にとどまらず、金融事業、住宅事業、マリン事業など幅広い分野に進出しています。
このような多角化戦略により、収益源の分散や景気変動に対するリスクヘッジが可能となり、持続的な成長の基盤を築いています。
意思決定には段階的な承認フローが必要になる
エンタープライズ企業の特徴として、意思決定に時間がかかる傾向があります。規模が大きい分、関与する部門や利害関係者が多く、課長、部長、本部長、役員など、段階的な承認フローを経る必要があります。そのため、承認が下りるまでに数か月から半年程度を要するのが一般的です。
エンタープライズ企業の例4選

1. トヨタ自動車
日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車は、自動車の生産・販売に強いイメージがありますが、金融や住宅、マリンなど、多角的な事業を展開しています。金融事業では、自動車ローンやリースを中心に世界35か国以上でサービスを提供しており、住宅事業では戸建住宅・マンション・リフォームを手がけています。また、マリン事業では、上質な自家用クルーザーの製造・販売も行っています。
従業員数は子会社を合わせて38万3,800人超えで、グローバル規模での事業展開を続けています。
2. 三井物産
総合商社である三井物産は、資源やエネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、ライフスタイル(食料・小売・ウェルネス)、次世代・機能推進の7つのオペレーティングセグメントと16の事業本部を展開しています。
従業員数は子会社を合わせて5万6,400人、62か国でグローバルに事業を行っています。
3. NTT
通信事業をメインとしているNTTは、モバイル・地域の通信事業、グローバルソリューション、不動産、エネルギーと幅広い分野に事業を展開しています。
従業員数は34万1,321人にのぼり、総資産は30兆625億円と、日本を代表するエンタープライズ企業の一つです。
4. パナソニックホールディングス
パナソニックは、家電や空調、食品流通、電気設備、デバイスなどの開発・製造・販売の事業を行う多角的企業です。
従業員数は約9万人で、そのうち海外従業員は約5万3,000人と全体の半数以上にのぼり、グローバル展開の成功を示しています。2024年度の売上高は3兆円を超え、その資金力の強さがうかがえます。
まとめ
エンタープライズとは大規模な企業・組織を指し、日本ではトヨタ自動車や三井物産などが代表として挙げられます。豊富な資金力があることで積極的な事業投資が可能になり、成長余地が大きいのが特徴です。一方で、規模が大きいがゆえに意思決定プロセスが複雑化し、最終承認に至るまでの時間が長くなる傾向にあります。これに対し、SMBはスピード感を武器としており、市場環境の変化や新規事業への対応力においてエンタープライズとは異なる強みを持っています。エンタープライズならではの投資力、SMBならではの機動力を活かすことが、持続的な成長のカギとなります。
よくある質問
エンタープライズの意味は?
エンタープライズは、英語の「enterprise」が語源で「冒険・企業・事業」の意味を持ち、ビジネスでは「大規模な企業や組織」を表す言葉として使用されています。
エンタープライズとSMBの違いは?
エンタープライズは従業員が多く資金力もあり、複数の事業を展開する大企業であるのに対し、SMBは主に特定の分野に特化した事業を運営する中小企業で、従業員の数や資金が限られているケースが多いです。
SMBからエンタープライズへ成長するには何が必要?
SMBからエンタープライズへ成長するには、資金力の強化、人材の拡充、事業の多角化、海外展開などが必要です。
文:Momo Hidaka





