ネットで洋服や雑貨を購入するとき、「サイズが合わなかったらどうしよう」「イメージと違ったら困る」と感じたことがあるでしょう。こうした不安を解消するのが返品ポリシーです。
実際にRecustomer社の調査では、ECサイトを月1回以上利用する消費者の92.2%が購入前に返品ポリシーを確認しており、さらに92.6%がその内容を見て購入をやめた経験があると答えています。
また明確な返品ポリシーを含む適切な返品処理システムがなければ、返品リクエストに多くの時間、労力、コストを費やすことになります。特にBFCMなど年末には、カスタマーサービスのメール対応に何時間も追われ、交換商品の配送費用が急増することもあります。
本記事では、返品が発生する背景や課題を整理しつつ、実際の成功事例やテンプレートを交えながら、売り上げにつながる返品ポリシーの作成方法と注意点を解説していきます。
返品ポリシーとは

返品ポリシーとは、購入者が商品やサービスを返品する際の条件や手続きを定めた企業独自のルールやガイドラインのことです。返品ポリシーには、どの商品がどの理由で返品可能か、返品を受け付ける期間や方法などが明記されています。
実際の内容は企業によって大きく異なり、Apple(アップル)のように14日以内とする厳格なものから、IKEA(イケア)のように365日間返品を受け付ける非常に寛大なものまでさまざまです。日本においても、返品ポリシーは「契約自由の原則」に基づき基本的には各企業が自由に定めることができます。
返品ポリシーの重要性

顧客が安心して購入できる
ECサイトでは商品を直接確認できないため、不安が最大の障壁となります。明確な返品ポリシーがあれば、万が一商品が期待したものではなかった場合にどのように対応してもらえるかがわかるため、購入者は安心感を覚え、購買意欲が高まります。
株式会社ロコンドは、「自宅で試着、自由に返品」というコンセプトを掲げ、消費者の不安を解消する仕組みを整えました。その結果、気軽に商品を試せる環境が整って顧客の購入ハードルが大きく下がり、黒字経営につながっています。
購入者とECサイト両方の利益を守れる
返品ポリシーは、購入者とECサイト双方の利益を守る役割を持ちます。
ECサイトでの買い物にはクーリングオフ制度が適用されず、特定商取引法に基づき、返品についての記載がない場合のみ8日以内の返品が認められます。しかしこの仕組みを正しく理解していない購入者も少なくありません。そのため、事業者が返品ポリシーを明確に定めておくことは、購入者に安心感を与えると同時に、不要なトラブルを避け、自らの利益を守ることにもつながります。
顧客視点の返品ポリシーは売り上げアップにつながる
購入者にとってメリットのある返品ポリシーは、そのまま売り上げアップにつながります。これまで「サイズが合わなかったらどうしよう」「試着できないから買えない」と感じていた消費者の不安が解消されれば、カゴ落ちの改善や新規顧客の獲得にも直結します。
返品ポリシーの作成方法

返品ポリシーの作成の際には返品できる条件、返品する際の手続き、返品の際の負担をどちらがするのか、返品の送り先等を明記する必要があります。これらをすべての購入者にとってわかりやすく書くことで、購入者により安心感を与えることができます。また返品ポリシーを正確に記すことは問い合わせ件数の削減につながり、会社全体の作業効率アップにもつながります。
返品ポリシーの記載項目4点

1. 返品・交換が可能な条件
返品可能な条件と不可能な条件を明確にしておきましょう。条件例は、以下のとおりです。
- 商品到着後7日以内に返品・交換リクエストをいただいている。
- 未使用もしくは試着のみ
- ダメージがない(におい、汚れ、傷)
- 洗濯・クリーニングしていない
- 裾上げ・お直ししていない
- タグ・ラベル・パッケージ等の付属品が揃っている
- 納品書がついている
2. 返送料の負担
返送時の送料をどちらがいくら負担するのかを記す必要があります。記載例は以下のとおりです。
- 返品時の送料はお客様負担となります。
- 注文時の金額が22,000円(税込)以上で、返品後の注文金額が22,000円(税込)未満になった場合、往路送料(660円)を頂戴します(すべて返品する場合も含む)
また、2つ目の項目に関しては、購入時に「〇〇円以上で送料無料」などのキャンペーンが適用されていた場合、返品後に合計金額が下回るときは無料になっていた送料分を回収しているECサイトもあります。
3. セール品や特売品の取り扱い
セール品や特売品に関しては返品・交換を受け付けないECサイトは多数あります。利益率や在庫の観点から自社ビジネスではどのように取り扱うかしっかりと検討し、可否について明記しましょう。
また、セール品の購入ページにも返品・交換の可否を明記しておくことで、購入者も安心して購入できます。
4. 返品受付期間
商品が手元に到着してから何日以内に返送までを行う必要があるかなどを明記するといいでしょう。記載例は、以下のとおりです。
- 商品がお手元に到着してから8日以内に、返品・交換申込みフォームより申請いただき、商品を返送してください。
また、7日以内に返品・交換申請すれば返品可能というような設定をしているECサイトもあります。
返品ポリシー作成時のポイント

顧客フレンドリーなポリシー
顧客に優しい返品ポリシーは、売り上げアップにつながる大きな要素です。かつては返品不可を小さく記載したり、返品ページを探しにくくしたりするなど、事業者の利益を優先した仕組みが多く存在しました。しかしこうした不透明さはネットショップの信頼感低下につながり、購買意欲を下げてしまいます。
現在では「返品・交換無料」などの顧客フレンドリーなポリシーを打ち出すことで、安心感を提供し、信頼を得て売り上げを伸ばす企業が増えています。返品対応を前向きに設計することで顧客満足度も高まり、結果的に事業者自身の利益を守ることにもつながるのです。
わかりやすい内容・導線
返品ポリシーは内容がわかりやすく、導線がシンプルであることが最も重要です。
どれだけ顧客フレンドリーな内容を掲げても、説明が複雑だったり手続きがわかりにくかったりすれば効果は半減します。100人が読めば100人が理解できる明確さが理想であり、返品方法がわかりやすければ購入時の安心感につながります。逆にわかりにくいECサイトはリピーターが増えず、チャーンレートが悪化してしまいます。
さらに、返品フローをシンプルに設計することで問い合わせ数を削減でき、結果として業務効率の改善にも直結します。
FAQ(よくある質問)の充実
FAQページを充実させることは、返品ポリシーをよりわかりやすくする効果的な方法です。
返品に関するよくある疑問を事前にまとめておけば、購入者は迷うことなく手続きを進められます。さらに、返品ポリシーのページ内にFAQへの導線を設置することで、必要な情報にすぐにたどり着ける仕組みを作れます。
これにより顧客体験が向上するだけでなく、問い合わせ対応の負担も軽減され、運営側にとっても効率的な仕組みとなります。
返品作業の効率化
ECサイト運営において、返品作業の効率化は欠かせません。返品対応にはメールのやり取りや返金・交換の確認など多くの工程があり、購入者が増えれば必然的に返品希望者も増加します。すべてを個別対応していては専任スタッフを配置せざるを得ず、コストや負担が大きくなります。
そこで重要になるのが明確な返品ポリシーです。手続きや判断基準をあらかじめ定めておけば、対応が標準化され業務の効率化につながります。効率的な返品体制を整えることは、顧客満足度を維持しながら持続的に売り上げを伸ばすための必須条件といえるでしょう。
返品ポリシーのテンプレート

ここでは返品ポリシーのテンプレートを紹介します。
〇〇サイトでは、ご購入いただいた商品をお客様都合で返品・交換することが可能です。商品がお手元に到着してから8日以内に、返品・交換申込みフォームでの申請と商品の返送までお済ませください。
■サイズが合わない・イメージと違ったなどの場合
お受け取り後8日以内に限り、返品対応が可能です。返品・交換申込みフォームよりご依頼ください。
お客様のご都合による返品は、返送料をお客様にご負担いただいております。
当社からの配送時の送料は返金ができかねますのでご了承のほどよろしくお願いいたします。
■商品に問題があった場合
万が一お届けした商品が不良品、もしくはご注文商品とは異なる場合、ご要望に応じて、早急に返品または交換対応させていただきます。お受け取り後8日以内に返品・交換申込みフォームをご記入ください。
お手続き完了後、返送方法などをご案内させていただきます。
返品・交換不可の条件
- お客様のもとに商品が到着後、8日以内に返品・交換のお申し込みをいただけなかった場合
- 商品に使用感・破損・汚損が見受けられる場合
- 商品のタグ・付属品の紛失がある場合
- 当社が指定する方法以外での商品返送をされた場合
- 返品不可クーポン等、特別条件で販売した商品の場合
- 商品ページまたはキャンペーンページ等で返品不可と表記されているご注文の場合
- 肌着、水着、アクセサリー、その他の着用により下着等を介さずに直接肌に触れることになる商品
ショップとしてオリジナリティがある返品ポリシーを作りたい方はShopify(ショッピファイ)で返品ポリシージェネレーターを使用すれば、誰でもプロフェッショナルな返品ポリシーを書くことができます。
売り上げにつながる返品ポリシーの成功事例
ZARA

ZARA(ザラ)は購入から30日以内であれば返品可能という柔軟なポリシーを設けています。条件として未使用でタグが付いていることが求められますが、このシンプルでわかりやすい仕組みは消費者に安心感を与え、オンラインでも気軽に商品を購入できる環境を整えています。
アパレルはサイズやイメージの違いが起こりやすく、返品が可能であることが購買意欲を後押しします。ZARAは柔軟な返品ポリシーを設けることで世界的にEC売り上げを拡大し続けており、店舗とオンラインをまたいだシームレスな購買体験を構築しています。
返品ポリシーでリスクの少ない買い物体験を提供することで、顧客が購入に踏み切りやすくなり、結果的に売り上げやブランド成長につながっている事例です。
Costco

Costco(コストコ)は「満足できなければ返品可能」という非常に柔軟なポリシーを掲げており、食品から日用品まで幅広い商品を対象に返品を受け付けています。
家電やパソコン、タブレットなど一部の商品は90日以内という制限があり、貴金属やギフトカード類は返品対象外といった例外も存在しますが、多くの商品を対象に柔軟に対応している点が特徴です。こうした仕組みにより、会員は購入時のリスクをほとんど感じることなく商品を選べるため、大容量や高額商品であっても安心して試すことができます。
その結果、顧客満足度や会員の信頼感が高まり、顧客維持やロイヤルティの向上へとつながっています。
COHINA

小柄女性向けのアパレルD2CブランドCOHINA(コヒナ)では、サイズ違いやイメージ違いといった購入者都合の返品を受け入れています。
アパレルにおいてサイズ感は購買判断の大きな要素であり、試着できないECでは不安につながりやすい点です。COHINAは返品可能な仕組みを整えることでこの不安を軽減し、安心して商品を選べるアパレルネットショップを実現しています。
返品ポリシーで購入のハードルを下げ、顧客が「とりあえず試してみよう」と思える心理的な余裕を生み出すことで新規顧客獲得や売り上げアップにつなげている事例です。
SOEJU

ラグジュアリーなベーシックアイテムを展開するアパレルD2CブランドSOEJU(ソージュ)は、顧客都合による返品・交換を受け入れており、交換の場合は返送送料をブランド側が負担しています。
さらに、期間限定で「返品送料無料の試着キャンペーン」を実施するなど、購入前後の不安を和らげる取り組みを積極的に行っています。
高品質な商品に加え、このような顧客体験を重視した返品ポリシーは、購入者の信頼感と満足度を高め、リピート購入やブランドロイヤルティの向上に直結しています。
one nova

究極の履き心地を追求した下着を販売するブランドone nova(ワンノバ)は、着用後でも返品・サイズ交換を無料という返品ポリシーを掲げています。
通常、下着は衛生面の理由から返品が難しいカテゴリーですが、サイズやフィット感などが重要な商材でもあります。そこで返品・交換が可能なポリシーを導入することで、購入時の心理的なハードルを大きく下げるだけでなく、他社ECサイトとの差別化につなげています。
その結果、ブランドポジションが確立し、EC平均の2倍という高い購入率を実現しています。
返品作業効率化Shopifyアプリ
EC構築プラットフォームのShopifyには、返品・交換に特化したアプリが複数あります。今回はその中からおすすめの4つのアプリを紹介します。
Recustomer

Recustomer(リカスタマー)は、購入後の顧客体験を最適化することを目的としたアプリです。
返品・交換・キャンセルといった一連の業務を自動化し、業務効率化と顧客満足度の向上を同時に実現できます。特に日本市場に適した機能を備えており、国内事業者に導入されるケースも多いのが特徴です。さらに、配送追跡機能を備えており、購入者が荷物の状況をリアルタイムで確認できます。
「お試し購入」という独自の仕組みにより、商品を実際に使用してから購入を確定できるため、購入時の心理的な不安を軽減し、結果として返品率の抑制や顧客体験の向上につなげられます。返品やキャンセルを効率的に処理しつつ、より快適な購入体験を構築したい事業者に有効な選択肢となるでしょう。
AfterShip Returns Center

AfterShip Returns Centerは返品と交換を効率的に管理できるクラウド型ソフトウェアで、越境ECなどグローバルに展開する事業者にも広く利用されています。
複数の宅配業者と連携できるため、返品商品の追跡や返却フローを可視化し、運営者と顧客の双方にとって透明性の高い返品プロセスを実現できます。返金に関しては、ストアクレジットや交換などの選択肢を提供することで、再購入につなげやすい仕組みを備えています。
また、返品ポリシーに基づいた自動化ルールを設定することで、複雑な返品業務も効率的に処理できます。返品状況の分析レポート機能もあり、データを活用して改善を繰り返すことで、ストア運営全体の品質向上にもつなげられます。
必要な機能を導入できる柔軟性があり、効率的な返品体制が整えられるアプリを探しているEC事業者に適しています。
Loop Returns & Exchanges

Loop Returns & Exchangesは、ブランド体験を重視するEC事業者に向けた返品・交換管理プラットフォームです。
顧客はセルフサービス形式でいつでも返品申請を開始でき、返金に加えて交換やストアクレジットといった選択肢も提供されるため、再購入や顧客ロイヤルティの強化につながります。
さらに、ワークフロー機能を活用すれば、商品カテゴリーや注文条件、顧客属性などに基づき、柔軟に返品ルールを設定することが可能です。不正利用の防止機能や返品状況のトラッキング、顧客の行動分析機能も搭載されており、事業者は返品フローの透明性と効率性を高めながら、顧客に一貫性のあるブランド体験を提供できます。
シンプルな返品処理以上に顧客体験の差別化を図りたい場合に特に有効なアプリです。
Yanet: Returns and Exchanges

Yanet: Returns and Exchangesは、Shopifyストアにおける返品・交換業務を自動化し、作業効率を大幅に向上させる無料アプリです。
顧客が簡単にリクエストを送れる埋め込み型ポータルや、カスタマイズ可能な返品ポリシー設定が可能で、状況に応じた柔軟な対応が可能です。リクエスト状況は自動でメール通知され、顧客満足度の向上にも貢献できます。
FedExやShippoなど複数配送業者と連携でき、返品用ラベルの発行、在庫更新、返金処理などもスムーズに行えます。日本語を含む多言語対応で海外展開にも最適なこのアプリは、煩雑な返品・交換業務を省力化したい事業者にとって強力なツールです。
まとめ
返品ポリシーは、消費者のECサイト利用時の不安と、事業者側の返品に関する問い合わせや手続き対応の負担を同時に解決できるガイドラインです。
顧客フレンドリーな返品ポリシーで売り上げや顧客満足度が向上する、アプリなどによる自動化で業務効率が改善されそのリソースを商品開発やマーケティングにあてることも可能になるなど、いまや返品は損失ではなく、ビジネスの成長を後押しする戦略的な要素へと変化しています。
まずは自社に合った返品ポリシーを整備して顧客に安心感を与え、信頼を築いて長期的な成長につなげましょう。
続きを読む
よくある質問
返品ポリシーを作るメリットは?
返品ポリシーを整えることで、購入者は安心して買い物ができ、事業者はトラブル回避や作業の効率化を目指せます。結果として新規顧客獲得やリピーター増加につながり、売り上げアップの大きな武器となります。
返品ポリシーに表記すべき項目は?
- 返品・交換が可能な条件
- 返送料の負担区分
- セール品や特売品の扱い
- 返品受付期間
売り上げにつながる返品ポリシーを作る際のポイントは?
売り上げにつながる返品ポリシーを作るには、顧客に優しい内容を設計し、誰でも理解できるわかりやすさと導線を整えることが重要です。
返品・交換に特化したShopifyのおすすめアプリは?
- 国内仕様で高品質な「Recustomer」
- 低価格で導入しやすい「AfterShip Returns Center」
- 多機能かつ越境EC向けの「Loop Returns & Exchanges」
- 煩雑な返品・交換業務を省力化できる「Yanet: Returns and Exchanges」
文:Takumi Kitajima





