お読みいただく前に
本記事は、Shopifyが海外で公開した事例・機能解説をもとにした翻訳記事です。内容の性質上、一部に日本では現在ご利用いただけない機能・サービスが含まれます。日本での提供状況は、記事末尾の「日本市場での注意点」にまとめていますので、あわせてご確認ください。
2025年、米国の人口はおよそ3億4,000万人。これだけでも巨大な市場ですが、世界に目を向ければ、その人口は約80億人にものぼります。
もちろん、世界中のすべての人々が顧客になるわけではありません。しかしこの数字は、海外市場にいかに大きなチャンスが眠っているかを示唆しています。もし、あなたのビジネスが国内市場だけに留まっているとしたら、それは世界人口のわずか4%強の顧客しか見ていないのと同じことなのです。
とはいえ、海外展開のハードルは決して低くありません。複雑な法規制、物流、そして言語や文化の壁など、乗り越えるべき課題は山積みです。しかし、入念なリサーチと戦略をもって臨めば、これらの課題をクリアし、ビジネスを大きく成長させることは十分に可能です。
グローバルコマースがもたらす3つのメリット
海外市場へ展開すると、企業は多様な顧客層にアプローチできるようになり、売上向上と経営の安定化が期待できます。ここでは、具体的な3つのメリットをご紹介します。
1. 新たな市場と顧客層の開拓
順調に成長を続けてきた企業も、やがて国内市場の伸びに限界を感じる時が来ます。そのような状況において、海外の新たな市場は、売上と利益を飛躍させる大きなチャンスとなります。
例えば、アルミ製ドッグクレートを製造するImpact Dog Crates社は、かつて複雑な通関手続きと高額な送料に悩まされていました。ヨーロッパへの送料が商品価格の半分に達することもあったといいます。しかし、Shopifyのソリューション「Managed Markets」を導入したことで状況は一変。海外売上は164%増加し、コンバージョン率も77%向上するなど、目覚ましい成果を上げています。
「海外での成長は、常に当社の経営戦略のロードマップにありました。Managed Marketsは、その目標達成を間違いなく加速させてくれました。」
— Jake Pereira氏、COO、Impact Dog Crates
2. 特定市場への依存からの脱却
ビジネスをグローバルに展開すると、特定の国や地域の経済状況に業績が左右されるリスクを軽減できます。複数の市場でビジネスを行っていれば、ある地域で売上が落ち込んでも、他の地域の売上でカバーできるため、経営の安定化につながります。
高級メンズウェアブランドのOrlebar Brownは、世界250店舗(うち米国50店舗)に統合コマース戦略を導入し、国やチャネルをまたいで買い物をする顧客に、どこでも一貫した購買体験を提供しています。
「シドニーの店舗で買い物を始め、ニューヨークの自宅のPCで商品を眺め、最終的にサントロペの店舗で購入する。そんなお客様の購買行動をサポートすることが、私たちの最優先事項です」と、同社のCTOであるJamie De Cesare氏は語ります。
このグローバル戦略の結果、同社は総所有コストの30〜40%削減、そしてカートからチェックアウトへのコンバージョン率66%向上を達成しました。
3. スケールメリット(規模の経済)の実現
より大きな市場に参入すると、生産・販売量が増加し、製品一つあたりのコストを下げられます。また、固定費をより大きな売上で分担できるため、生産プロセスが最適化され、サプライヤーとの価格交渉も有利に進められるようになります。
グローバルコマースの4つの課題
海外販売には、ビジネスや運営上の大きな課題が伴います。ここでは、代表的な4つの課題と、その乗り越え方をご紹介します。
1. 各国の法規制への準拠
海外で商品を販売するには、自国と相手国の両方の法律を遵守せねばならず、具体的には税法や事業運営に関する様々な要件、その他の規制に対応する必要があります。
例えば、中国でビジネスを展開するには、中国の事業者許可証と商業インターネットコンテンツプロバイダーライセンスの取得が求められます。さらに、中国の消費者向けECサイトは、国の検閲法(グレートファイアウォール)にも準拠しなければなりません。
まずは、自社のビジネスに適用される法規制を調査することから始めましょう。米国商務省の国際貿易局では、グローバル展開に取り組む米国企業向けに、国別の商業ガイドなどの豊富なリソースを公開しています。
また、各国の政府も海外企業向けに英語のウェブサイトを用意していることが多く、例えば中国への投資を検討する企業向けの専門サイトなどでは、具体的な手続きや注意点が詳しく解説されています。
💡 Shopifyでは、対象国のチェックアウト時に、関税と輸入税を自動で計算・徴収する機能があります。これにより、商品到着時にお客様が想定外の料金を請求される事態を防ぎ、返品や顧客満足度の低下を回避できます。
2. 現地の言語と文化への対応
海外での販売は、言語も文化も異なるお客様とコミュニケーションをとることを意味します。この対応を誤ると、意図が伝わらなかったり、文化的な反感を買ってしまったりする可能性があります。
成功の鍵は、事前の市場調査です。文化的な背景の違いが、マーケティングや商品の見え方にどう影響するかを深く理解した上で、現地の文化や経済状況に合わせたマーケティング戦略を立てることが重要です。
例えば、マクドナルドは、個人よりも家族やグループでの行動を重視するグアテマラの文化に合わせて、4人以上向けのセットメニューをプロモーションしています。一方、米国では個人の利便性を重視し、「アプリをダウンロードすればフライドポテトが無料」といったキャンペーンを展開するなど、国によってアプローチを大きく変えています。
💡 Shopifyは、Weglotなどのアプリと連携することで、20以上の言語に対応。お客様が希望する言語でサイトが自動的に表示されるようになります。
また、地域ごとに価格を調整したり(例:オーストラリアでは送料を考慮した価格設定)、表示する商品を変えたり、グローバル拠点ごとに在庫を管理したりと、お客様にとって親しみやすい購買体験の提供が可能です。
3. 世界中のお客様への商品配送
近年、世界的にサプライチェーンの混乱が続いており、この不確実な状況は今後も続くと予想されます。こうした中でビジネスを安定させるには、強固な物流体制とサプライチェーン管理への投資が欠かせません。
例えば、以下のような戦略が考えられます。
- ニアソーシングの活用: 最終的な消費者のできるだけ近くで原材料を調達し、商品を生産する方法です。これにより、配送コストや環境負荷を削減できる上、サプライチェーンの混乱が起きても影響を受けにくくなります。
- 海外倉庫の設置: 大きな初期投資は必要ですが、海外に倉庫を構えることで、配送コストを抑え、よりスピーディーな配送が実現します。
- サプライチェーン技術の導入: 物流ソフトウェアや在庫管理システム、サプライチェーンの自動化ツールなどを活用すれば、混乱を予測し、ビジネスへの影響を最小限に抑えられます。
- 3PL(サードパーティ・ロジスティクス)の利用: 在庫保管、注文処理、配送までを専門業者に委託する3PL(サードパーティ・ロジスティクス)も有効な選択肢の一つです。
💡 Shopifyは、DHL、UPS、FedExといった世界的な配送サービスと連携しています。国別の配送エリア設定や、通関書類の自動入力、3PLとの連携などをサポートしており、世界中への商品発送がより簡単になります。
4. さまざまな通貨と決済方法への対応
グローバルコマースでは、お客様と事業者、双方にとって使いやすい国際決済システムの構築が不可欠です。多くのお客様は自国通貨での支払いを好むため、できるだけ多くの通貨に対応できる決済パートナーを見つけることが、海外売上を伸ばす鍵となります。
💡 Shopifyは、iDEAL(オランダ)やPaytm(インド)といった国別の決済方法を含め、100種類以上の決済手段に対応。また、Shopify Plusプランのブランドであれば、自動両替機能で複数の通貨を簡単に管理できます。
Shopifyのグローバル展開のサポートについて
ここまで見てきたように、海外展開には多くの課題が伴いますが、Shopifyはそれらを乗り越えるための強力なソリューションを提供しています。
Managed Markets
Managed Marketsは、海外販売における最も煩雑な業務を代行する販売事業者(MoR)サービスです。取引自体は加盟店様のShopifyストアで行われますが、その裏側でMoRが国際取引の複雑な手続きを仲介する仕組みになっています。
Managed Marketsが提供する主なサービス:
- 迅速かつ手頃な送料: 海外配送の特別割引料金、全注文の荷物追跡、1〜5日で世界中に届くエクスプレス配送を提供します。
- 現地に最適化された決済: お客様が普段から使い慣れた方法で決済できるため、コンバージョン率の向上が期待できます。
- 税務コンプライアンスの簡素化: VATや関税、地方税は、購入時点でお客様が前払いし、Shopify側で納付まで代行。コンプライアンスに関する悩みを解消します。
- スムーズな通関: 遅延や予期せぬ追加料金の発生を防ぎ、顧客体験を損なうことなく商品をお届けします。
- 不正注文・チャージバック対応: 不正な購入やチャージバックはManaged Marketsが対応するため、海外販売のリスクを軽減できます。
追加ストア
Shopify Plusプランを利用する企業は、メインのストアとは別に、最大9つのストア(合計10ストア)を追加で開設できます。これにより、言語やコンテンツ、通貨、価格、税のルールなどを地域ごとに最適化したストアを展開することが可能です。米国、英国、EU、アジア太平洋(APAC)など、地域ごとに全く異なる顧客体験を提供したい場合に最適な機能といえるでしょう。
グローバルコマースに関するFAQ
グローバルコマースとは何ですか?
A. グローバルコマースとは、企業が自国だけでなく、海外のお客様にも商品やサービスを販売することです。これには、オンラインでの販売と、海外の実店舗での販売の両方が含まれます。
Q. 海外の新しい市場に進出する際、どんなことを考慮すべきですか? A. 一般的に、以下のような点を検討する必要があります。
A. グローバルコマースとは、企業が自国だけでなく、海外のお客様にも商品やサービスを販売することです。これには、オンラインでの販売と、海外の実店舗での販売の両方が含まれます。
- 各国の法規制やコンプライアンスへの対応
- 言語や文化の違いへの適応
- 海外への商品配送と物流網の構築
- 国際的な決済システムの導入
Q. 海外向けのマーケティングや広告は、どのように調整すれば良いですか?
A. グローバルコマースを成功させるには、以下の点が重要です。
- ビジネスを展開するすべての国で、事前に市場調査を行う
- 現地のマーケティング専門家と協力し、ブランドイメージや広告をその国に合わせて調整する
- 機械翻訳ではなく、プロの翻訳者に依頼し、誤解を招く表現を避ける
Q. 海外の法規制や基準を確実に遵守するには、どうすれば良いですか?
A. 米国国際貿易局(ITA)が、米国企業の海外販売と法規制遵守を支援する国別リソースを公開しています。まずはITAや各国の政府公式サイトで情報を集め、その上でShopify Marketsのような国際コンプライアンスをサポートするECプラットフォームの活用を検討すると良いでしょう。
✅ 日本で利用可能な機能
- Shopifyペイメント: オンライン決済の最も簡単な方法
- Shop Pay: ワンタップでの安全で高速なチェックアウト
- Shop Pay Component: グローバルに利用可能な決済コンポーネント
- Shop App: iOS・Android対応のショッピング・配送追跡アプリ
- Shopify POS ソフトウェア: 実店舗とオンラインの在庫・売上同期システム
- Expansionストア: 最大9つの追加ストア作成(Shopify Plusプラン)
- 基本税務機能: 自動・手動税務計算
- サードパーティ税務アプリ対応: 専門税務ソフトとの連携
- 多言語・多通貨対応: サードパーティアプリによる20以上の言語サポート
- 国際配送連携: DHL、UPS、FedExなどとの連携
- 豊富な決済方法: 100以上の決済オプション(地域別オプション含む)
- アプリエコシステム: 16,000以上のアプリによる機能拡張
❌ 日本で現在利用不可の機能
- Managed Markets: 国際販売の販売事業者サービス(アメリカ限定)
- Shopify Shipping: Shopify独自の配送割引サービス(対象国のみ)
- Shopify Tax: 高度な税務計算・申告自動化(米国・EU・英国限定)
- Shopify Fulfillment Network: フルフィルメント代行サービス(米国発送のみ)





