商品を購入者に届けるプロセスであるフルフィルメント(注文処理)は、EC運営のなかでも複雑な領域です。しかし、このプロセスを正確かつ効率的に行うことで、顧客満足度の向上、業務の効率化、売上拡大につながります。
この記事では、EC事業におけるフルフィルメントの概要や具体的な業務の流れ、効果的な戦略について解説します。ぜひ、参考にしてください。
EC事業のフルフィルメントとは

EC事業のフルフィルメントとは、ECサイトで注文された商品が顧客に届くまでの全体のプロセスを指します。受注から、在庫管理、商品の梱包、そして迅速な配送のための物流管理までを含みます。EC事業におけるフルフィルメントは、顧客に商品を正確かつ迅速に届けることを目的としています。ブランドにとっても、効率的な配送体制を構築し、顧客満足度を高めることが重要です。こうした一連の流れは「注文フルフィルメント」とも呼ばれ、EC物流の中核を担うプロセスです。
ECのフルフィルメント業務

ECのフルフィルメントは、ECストアの運営のなかでも特に物流面で複雑な領域であり、注文処理には主に以下の7つの工程が含まれます。
- 在庫管理:EC事業に必要な原材料、製品の部品、または完成品を仕入れ、保管するプロセス。多くのEC企業は自社で製品を製造していないため、在庫管理はフルフィルメントの重要な業務。顧客の注文を処理する前に、手元にある在庫の状況を正確に把握することが不可欠
- 倉庫保管:販売準備が整った商品を出荷まで保管するプロセス。自社倉庫での管理や、第三者の倉庫サービスに委託することも可能
- 注文処理:ECサイトからの注文情報を確認し、注文完了の報告や決済状況、在庫の状態をチェックする工程
- ピッキング・検品:注文内容に基づいて倉庫から該当商品を取り出す工程。商品の種類や数量に誤りがないか、破損・汚損・異物混入がないかを確認するための検品作業
- 梱包:商品の出荷に向けた梱包の工程。ブランド価値を高めるオリジナル包装や、ワクワクする開封体験の提供、輸送中の破損を防ぐため緩衝材での梱包
- 配送:倉庫から顧客へ商品を届けるプロセス。配送業者や料金プランの選定、発送手続きの実施。顧客指定の配送日時を守ることが顧客満足度向上において重要な要素
- 返品:商品に不満や不具合があり、顧客から商品が返送された場合に発生する返品処理。商品の受領・状態確認・再登録を行う工程で、再販・交換・返金といった対応を含む
フルフィルメントは、受注管理システムと連携させることで、業務効率をさらに高めることができます。
ECのフルフィルメントのための3つの戦略

EC事業のフルフィルメントには、以下の3つの方法があります。自社のビジネスモデルや事業規模、リソースなどに応じて柔軟に検討しましょう。
社内処理
社内処理は、自社で注文を処理し、検品、梱包、発送まですべてを行う方法です。月間注文数が100件未満の場合は、導入コストが抑えられ、梱包やブランド体験を自社で管理できる社内ECフルフィルメントが向いています。ただし、注文数の増加に伴い、人員・時間・スペースの確保が課題となるほか、発送コストが高くなる傾向があります。
ドロップシッピング
ドロップシッピングは、ECサイトで注文が入った際、サプライヤーやメーカーが商品を梱包して直接購入者に商品を発送するビジネスモデルです。販売者は在庫を持つ必要がなく、商品管理や発送作業を行う必要がありません。
このビジネスモデルは、輸入商品や海外の商品をメインに取り扱うEC事業が利用する傾向にあります。例えば、韓国のディーラーから化粧品を直接顧客へ発送することで、輸入手続きや在庫管理などのプロセスを省略できます。
ドロップシッピングのメリットは、初期費用や在庫リスクなどを抑えられ、サプライヤーにすべてを任せることでプロセスを効率化できることです。また、受注した場合のみ卸売価格を支払うため、経済的な負担を軽減できます。。
一方で、出荷や取り扱いプロセスをサプライヤーに任せるため、出荷のスピードや品質に問題があった際には、顧客満足度や売り上げに影響が出る可能性があります。
第三者物流(3PL)
第三者物流(3PL)とは、商品の保管から受注処理、ピッキング、梱包、配送まで、出荷に関わる一連のフルフィルメント業務を専門業者に委託するビジネスモデルです。地上・航空・海上輸送の調整まで任せられるため、サプライチェーン全体を一括して管理できます。
3PLは、社内での処理体制が整っていない段階でも、効率的な在庫管理や配送を実現できるため、急成長中のブランドやスタートアップに特に人気があります。物流の専門知識を持つ企業に任せることで、在庫保管や出荷作業を自社で行う必要がなくなり、業務効率化や運営コストの削減にもつながります。また、事業の拡大にも柔軟に対応しやすくなります。
一方で、出荷品質や返品対応などの顧客対応をすべて委託するため、問題発生時の対応が難しく、顧客満足度や売り上げの低下につながる可能性があります。
最適なEC事業のフルフィルメント戦略を見極めるためのポイント

- どのような種類の商品を出荷するのか。また、それは大型・重量商品か、それとも小型で低コストに発送できる商品か
- 商品や原材料を保管するためのスペースは確保されているか
- 注文状況や返品に関する問い合わせを処理するための顧客サービス体制は整っているか
- フルフィルメントのミスが発生した場合に備えて、予備の予算を確保しているか
- 在庫の損失、破損、盗難などが利益に与える影響はどのくらいか
- 顧客に配送割引を提供しているか
- 国際配送を行っているか
- 出荷状況を追跡するためのシステムが整っており、顧客自身も確認できるようになっているか
- 平均的な配送日数はどのくらいで、どのくらい迅速に出荷が可能か
顧客は、スムーズでストレスのない配送体験を期待しています。そのため、その期待に応えられる戦略を選ぶことが、ビジネスの信頼向上と成長につながります。
まとめ
EC事業のフルフィルメントは、購入された商品を顧客の手元に完璧な状態で届けるための重要なプロセスです。そのため、在庫管理から配送・返品までの各工程を正確かつ丁寧に遂行することが求められます。
自社でフルフィルメントを行えば、顧客やシーズンに合わせた魅力的な開封体験を演出できます。また、ドロップシッピングや3PLサービスを活用すれば、業務効率化や事業拡大への柔軟な対応が可能です。
自社のビジネスモデルやブランド戦略に合ったフルフィルメント方法を選ぶことで、顧客満足度を高め、長期的な成長につなげることができるでしょう。
EC事業のフルフィルメントに関するよくある質問
ECフルフィルメントとは?
ECフルフィルメントとは、ECサイトで受けた注文商品を、顧客の手元に確実かつ迅速に届けるための業務プロセスのことです。
自社でフルフィルメントを行う場合と、ドロップシッピングや3PLを利用する場合の判断基準は?
自社でフルフィルメントを行う場合と、ドロップシッピングや3PLを利用する場合の判断基準は、注文数や在庫量、リソース(人員・スペース)などです。例えば、月間注文数が少ない場合は社内処理でも対応可能ですが、規模が拡大して処理が追いつかない場合は、ドロップシッピングや3PLへの委託が効率的です。
ドロップシッピングとフルフィルメントの違いは?
ドロップシッピングは在庫を持たず、サプライヤーが顧客に直接発送する仕組みです。一方、フルフィルメントは商品を一度保管し、注文に応じて出荷する仕組みです。
文:Momo Hidaka





