今日ではオンラインショッピングが一般的になっていますが、かつてはまったく新しい試みでした。最初のオンライン販売は1994年に行われ、ある男性が自らのウェブサイト「NetMarket」を通じて友人にスティングのCDを販売したのが始まりです。これは世界初のオンライン小売プラットフォームとされています。
それ以来、電子商取引(Eコマース)はビジネスモデルとして急速に成長し、EC企業はその領域を拡大しながら、世界の小売業界を再定義してきました。2022年には世界のEコマース売上高が5兆ドルに達し、2025年には6兆ドルを超えると予測されています。
日本でもEコマースは著しい成長を遂げており、特にコロナ禍以降、オンラインショッピングの需要が急速に高まっています。
Eコマースとは?
Eコマースとは「電子商取引」の略で、インターネットを通じて商品やサービスが売買されるビジネスモデルを指します。
このモデルは、取引を成立させるための金銭やデータのやり取りも含みます。多くの消費者はEコマースを「商品販売」と結びつけて考えがちですが、実際にはインターネットを介して行われるあらゆる商取引を指します。たとえば、海外のメーカーからセーターを購入したり、ジモティーなどを通じて清掃サービスを依頼したりすることもEコマースの一例です。
Eコマースの成長は、AmazonやAlibabaといったデジタルネイティブのグローバルオンラインマーケットプレイスだけでなく、イオンやヨドバシカメラなど、自社のオンライン販売を拡大している従来型の小売業者によっても支えられています。これらの小売企業は、Eコマースの基本的な仕組みは共通していますが、取り扱う商品の種類を特化させたり、独自の配送・受取戦略を構築したりすることで、オンライン市場における独自のポジションを確立しています。
トップEC企業10社
1. Shopify
Shopifyは、誰もがビジネスを始め、成長させ、管理し、拡大できる、包括的なデジタルコマースプラットフォームです。企業は、オンラインストアを構築し、顧客へのマーケティングを行い、複数の販売チャネルや拠点で決済を受け入れることができます。
Shopifyのコマース分野における専門知識とリーダーシップは、プラットフォームを利用する世界中の何百万ものビジネスオーナーの経験に裏打ちされています。個人事業主から大企業まで、彼らの成功がShopifyに新たな機能や製品を生み出す原動力となり、現代のビジネスを支え、コマース業界の未来を形づくっています。
Allbirds、Silk Laundry、Quad Lockといったブランドも、Shopifyを活用して成長を遂げています。
2. Amazon
Amazonは、Eコマースに加え、クラウドコンピューティング、デジタルストリーミング、AIなどを手がけるアメリカの多国籍テクノロジー企業です。Alphabet(Google)、Apple、Meta(Facebook)、Microsoftと並ぶ「アメリカのビッグファイブ」と呼ばれる企業の一つであり、世界最大級のEC企業でもあります。
Amazonは自社製品を直接販売するだけでなく、第三者の販売事業者が自らの商品を出品できるマーケットプレイスとしても機能しています。現在、Amazonでの売上の約60%は第三者販売によるものです。
消費者の立場から見ると、Amazonが販売する商品と第三者が販売する商品に大きな違いはありません。一方、販売者の立場から見ると、Amazonが商品の保管・出荷を行う(FBA)方式と、販売者自身が管理・出荷を行う(FBM)方式があります。FBMを利用する場合でも、販売者はAmazonの定める出荷および梱包基準に従う必要があります。
3. eBay
eBayは、カリフォルニア州サンノゼに本社を置くアメリカの多国籍EC企業です。1995年、ピエール・オミダイアによってオンラインオークションサイトとして設立されました。eBayは、2000年代初頭のドットコムバブルを生き残った数少ない企業の一つです。これは、1990年代後半にオンライン企業への過剰投機によって引き起こされた株式市場の崩壊を指します。
現在、eBayは消費者同士の取引をベストオファー方式で行うだけでなく、固定価格での販売も行う数十億ドル(数千億円)規模のEコマース企業へと成長しています。サイトの利用は購入者にとって無料ですが、販売者は商品を出品する際に手数料を支払う必要があります。
eBayの2022年の年間純収益は約98億ドル(約1兆4,700億円)で、前年の104億ドル(約1兆5,600億円)から減少しました。
4. Etsy
Etsyは、手作りやビンテージ製品の販売に特化したアメリカのEコマースプラットフォームです。ジュエリー、衣類、ホームデコレーション、家具、クラフト用品、ツールなどが販売されています。
このサイトは、クラフトフェアの伝統を引き継ぎ、小規模事業者が自分のオンラインストアを持てるよう支援しています。出品者は、1アイテムあたり20セント(約30円)の手数料で商品を掲載することができます。
Etsyは2022年に約26億ドル(約3,900億円)の収益を報告しており、約9,200万人のアクティブバイヤーを抱えています。
5. Craigslist
Craigslistは、アメリカ発のクラシファイド広告ウェブサイトで、新聞の広告欄(クラシファイドセクション)をモデルにしています。仕事、住宅、販売アイテム、単発の仕事、サービス、ディスカッションフォーラムなど、さまざまなカテゴリーがあります。
1995年、クレイグ・ニューマークがサンフランシスコ湾岸地域のイベント情報を友人に共有するメールリストとして始めたのがきっかけです。翌1996年にはウェブサイトとして公開され、その後、求人や販売など他のカテゴリへと拡大していきました。
現在、Craigslistは70カ国以上の都市圏で利用されており、月間訪問数は約1億9,160万回に上ります。
6. Meta
Meta Platforms(旧Facebook)は、カリフォルニア州メンロパークに本社を置くアメリカの多国籍テクノロジー企業です。Facebook、Instagram、WhatsAppといったソーシャルメディアプラットフォームの親会社として広く知られています。
また、Metaは「Facebook Marketplace」を運営しており、Craigslistのように個人間の売買やサービス提供を可能にしています。さらに、FacebookやInstagramのショップ向けにEコマース機能を提供しており、ユーザーはInstagramの投稿から直接商品を購入することができます。Metaの2024年の収益は約1,645億ドル(約24兆7,000億円)でした。
7. Walmart
Walmartは、アメリカの多国籍小売企業で、「スーパーセンター」と呼ばれる大型店舗チェーンを運営するとともに、同名の主要Eコマースサイトも展開しています。1960年代に低価格を強みに急成長し、現在では世界最大級の小売企業のひとつです。全米50州に店舗を持ち、カナダやメキシコなど海外でも強い存在感を示しています。
Walmartは、既存の店舗をオンライン注文の配送拠点として活用することで、効率的なEコマースモデルを構築しています。顧客は、遠く離れた倉庫からではなく、最寄り店舗の在庫からWalmart.comを通じて商品を購入することができます。
Walmartの2022年の収益は約6110億ドル(約91兆6,500億円)で、Walmart.comの訪問回数は毎月約2億6,800万回に上ります。
8. Target
Targetは、アメリカの大型小売チェーンで、Walmartに次ぐ全米第2位の小売業者です。全国に1,800以上の店舗を展開し、実店舗の運営と並行して強力なEコマース事業も展開しています。
Walmartと同様に、Targetはファッションアイテムやホームデコレーション、電子機器、食品など、幅広い消費財を取り扱っています。また、実店舗をオンライン注文の配送拠点としても活用し、効率的な販売ネットワークを構築しています。
Targetの2022年の収益は約1,090億ドル(約16兆3,500億円)で、サイトの訪問回数は毎月約1億5,470万回に上ります。
9. Best Buy
Best Buyは、ミネソタ州に本社を置くアメリカの多国籍家電小売企業です。1966年にリチャード・M・シュルツとジェームズ・ウィーラーによってステレオ専門店「Sound of Music」として設立され、1983年に現在の名称へとリブランドし、より幅広い電子機器を扱うようになりました。
実店舗に加え、Best Buyは公式サイト「BestBuy.com」を通じて強力なEコマースサービスを展開しています。Best Buyの2022年における米国内収益は約460億ドル(約6兆9,000億円)で、全体の90%以上を占めています。同サイトへの訪問回数は毎月約9,380万回です。
10. Alibaba
Alibaba Group Holding Limitedは、中国の多国籍テクノロジー企業で、Eコマース、インターネットサービス、技術開発などの事業を展開しています。1999年に杭州で設立され、消費者間(C2C)、企業間(B2B)、企業対消費者間(B2C)の取引サービスや製品検索エンジンを提供しています。
Alibabaは「中国のAmazon」と呼ばれることもありますが、より幅広い製品を扱うワンストップ型のEコマース企業として知られています。さらに、個人や企業が購入後に再販できる大量の卸売商品を提供している点が特徴です。
Alibabaの2022年の収益は約1,265億ドル(約18兆9,750億円)で、消費者向けプラットフォーム「AliExpress」への訪問回数は平均して毎月約4億3,100万回に上ります。
最適なEC企業の選び方
Eコマース業界は、AmazonやAlibabaといった巨大企業の成長によって大きく形作られていますが、それでもオンラインストアが独自のブランドを築くチャンスは十分にあります。
もしあなたが小規模ビジネスにEコマース機能を導入しようとしている場合や、デジタルネイティブなEC事業をゼロから立ち上げようとしている場合は、次のような点を検討することが重要です。
- 自社のウェブサイトをすでに持っていますか? それとも、ウェブサイトビルダーを利用したり、開発者に依頼したりして新たに作成する必要がありますか?
- 既存のウェブサイトがある場合、そのままEコマース機能を追加できますか? それとも全面的なリデザインが必要ですか?
- あなたのビジネス形態に最も適したEコマースプラットフォームはどれですか?(B2C、B2Bなど)
- Eコマース事業が投資に見合う成果を出すために、どの程度のトラフィックを目標とすべきですか?
単に「最も優れたオンラインストアビルダー」を選ぶだけでなく、各プラットフォームが提供するビジネス支援ツールにも目を向けてみましょう。オンラインストア、決済処理、POS(販売時点情報管理)、さらに小規模ビジネス向けの融資サービスなどがシームレスに統合されたエコシステムを活用することで、ビジネス全体の効率を高めることができます。
たとえば、Shopifyはビジネスのあらゆる側面を管理できるツール一式を提供しており、顧客体験やチーム運営を最適化するために4,000以上のアプリを揃えたApp Storeも展開しています。
自社のEコマースサイトでオンライン販売を始めるのは、これまでになく簡単で、スピーディかつ拡張性の高いものになっています。Shopifyは、オンライン・対面販売の両方、そしてその中間のあらゆる販売チャネルで顧客とつながることができる統合型プラットフォームです。
EC企業に関するよくある質問
主要なEC企業を教えてください
- Shopify
- Amazon
- eBay
- Etsy
- Mercado Libre
- Meta
- 楽天市場
- Walmart
- Target
- Alibaba
Eコマースの例を5つ挙げてください
Eコマースの代表的な例は次のとおりです。
- オンライン小売店:Amazonのように、消費者が幅広い商品をオンラインで購入できる企業。
- オンラインマーケットプレイス:eBayやEtsyのように、手作り品やヴィンテージ品、収集品などを売買する買い手と売り手をつなぐプラットフォーム。
- デジタルダウンロード:Apple MusicやSteamのように、音楽、ゲーム、ソフトウェアなどのデジタル商品を販売するサービス。
- サブスクリプションサービス:NetflixやSpotifyのように、定額制でデジタルコンテンツを継続的に利用できるサービス。
- クリック&コレクト(オンライン購入・店頭受取):オンラインで購入した商品を、後日店舗で受け取る販売方式。





