経営者や起業家にとって、信頼できる仲間と定期的に学び合い、成長を支え合うことはとても大切です。しかし、同じ立場で悩みを共有できる相手を見つけるのは決して簡単ではありません。そこで注目されているのがマスターマインドグループという取り組みです。
マスターマインドとは、複数の人が同じ目標に向けて知恵や経験を持ち寄ることで、一人では生み出せない新しい発想や成長を実現する考え方です。その実現のため、アドバイスやサポートを提供しあうコミュニティがマスターマインドグループと呼ばれます。
この記事では、マスターマインドグループとは何かやその特徴、そしてどのように運営・活用すれば効果を最大化できるのかを詳しく解説します。
マスターマインドグループとは?

マスターマインドグループとは、定期的に対面やオンラインで集まり、互いにアドバイスやフィードバックを交換しながら成長を支え合う仲間の集まりを指します。例えば、同じ業界や地域の経営者が集まる「経営者勉強会」や「異業種交流会」が該当するでしょう。
その活動内容としては、定期的なミーティングや勉強会・研修、経営課題の共有や新規事業のアイデア検討、人材育成の方法などの話し合いが行われます。また、チャットツールやメール、専用のオンラインフォーラムなどを通じ、メンバー同士で交流やサポートを行います。近年では、ビジネスコミュニティや経営塾でも同様の仕組みが取り入れられ、実際に事業の成長や人脈形成に大きな効果を上げています。
マスターマインドグループを見つける際のポイント

まずは知人に声をかけてみる
同僚や友人、仕事上でつながりのある人に「マスターマインドグループに参加したことがあるか」「興味を持っているか」を尋ねてみましょう。そこから思いがけず有益な情報が得られたり、新しい人脈を紹介してもらえることもあります。
また、ソーシャルメディアやSNSを活用して、自分と同じような課題や目標を持つ人を探してみるのも有効です。もし身近に志を同じくする人が見つかったら、自分たちで小さなマスターマインドグループを立ち上げてみるのも良いでしょう。
オンラインまたはオフラインでグループを見つける
インターネット検索でマスターマインドグループを見つけることもできます。業界ごとのオンラインフォーラムや、経営者・起業家向けのFacebook(フェイスブック)グループ、LINE(ライン)オープンチャット、あるいはX(エックス、旧Twitter)のコミュニティなどは有力な選択肢です。
また地域のオフライン型グループは、経営者勉強会や異業種交流会、商工会議所や起業家支援団体が開催しているイベントで見つけることができます。
合わないグループで妥協しない
参加するなら、自分が尊敬でき、向上心にあふれた経営者や起業家で構成されているマスターマインドグループが理想です。
気心の知れた仲間だけで集まると、つい妥協してしまいがちですが、それでは新しい刺激や成長の機会を得にくいかもしれません。むしろ、自分より一歩先を進んでいる人や、異なる分野で成果を上げている人が集まるグループに身を置きましょう。そうした人々の経験や考え方に触れることで、自身のビジネスにおける判断や意思決定に大きなヒントを得ることができます。
リモートでのマスターマインドグループの運営方法

Zoom(ズーム)やTeams(チームズ)といったオンライン会議ツールを活用すれば、場所にとらわれず全国・海外のメンバーとつながることもできます。特に地方在住で周囲に同じ志を持つ仲間が見つかりにくい場合や、日常的に出張が多い経営者にとって、リモート型のマスターマインドグループは大きなメリットがあります。
会議を録画しておけば後から共有することもできますし、Slack(スラック)などのチャットツールで最新のやり取りにも追いつくことができます。さらに、オンラインであればビジネスモデルや業界が異なる経営者とも交流しやすくなり、自分の事業にはない視点や経験を取り入れることができます。多様なバックグラウンドを持つ仲間から得られる意見は、意思決定や新しい戦略の立案に大いに役立ちます。
マスターマインドグループに参加するメリット

責任感が生まれる
マスターマインドグループに参加すると、自分の目標を仲間に対して公言することになります。「有言実行」に向かう責任感は、ビジネスを前進させる強い原動力となるでしょう。
人は自分を裏切るよりも、仲間を失望させる方がはるかに心苦しいものです。そのため、約束したタスクを実行しようとする意欲が高まり、行動を継続しやすくなります。これは一人では難しいモチベーションの保ち方を、仲間との約束によって支えられる仕組みとも言えます。
一人ではつい先延ばし癖が出てしまうタスクも、仲間に公言することで実行に移しやすくなるでしょう。また、成功を応援し、アドバイスやヒントを与えてくれる仲間の存在も大きな支えとなります。
客観的なフィードバックで気づきを得られる
マスターマインドグループに参加すると、自分と同じようにビジネスに取り組む仲間から率直なフィードバックを得ることができます。
仲間はあなたの顧客でも競合でもないため、利害関係に左右されず、偏りのない意見を伝えてくれるでしょう。その結果、自分では気づけなかった改善点や新しい可能性を発見することができ、意思決定の質を高めることにつながります。客観的な視点から学びを得られることは、マスターマインドグループに参加する大きなメリットの一つなのです。
相乗効果が生まれる
マスターマインドグループでは、単なるアイデアの交換にとどまらず、時にはプロジェクトやタスクで協力し合えることもあります。それ自体はグループの活動目的ではありませんが、自然な流れでお互いをサポートし合う場面が生まれるのです。
さらに、SNSやブログを通じて互いの活動を紹介し合うことで、クロスプロモーションの機会が得られることもあります。こうした協力関係は、一人では得られない成果を生み出し、ビジネスに新たな広がりをもたらします。
信頼できる仲間ができる
マスターマインドグループは、業界内外で信頼できるネットワークを築くのに最適な場です。参加を通じて、人脈が広がるだけでなく、自分のプロジェクトや成長戦略を支援してくれる人を紹介してもらえる可能性もあります。ネットワークを広げれば広げるほど、新しいチャンスの扉が開かれていきます。
また、異業種のつながりが思わぬ場面で役立つこともあります。普段接点のない分野から得られる知見や人脈は、事業に新しい視点や可能性をもたらしてくれるでしょう。
必要な情報やノウハウを共有できる
マスターマインドグループの魅力のひとつは、メンバーがそれぞれ異なる専門分野や知識を持ち寄れることです。
例えば、マーケティングに強くてもデザインの知識が不足している場合、他のメンバーが力を貸してくれることがあります。異なるバックグラウンドやスキルが融合することで、学びを深めながら自分の強みをさらに伸ばし、弱点を補う環境が自然と生まれます。
仲間からサポートを受けられる
ビジネスで困難に直面したとき、マスターマインドグループの存在は大きな心の支えになります。仲間は励ましを与えてくれるだけでなく、質問に答えたり、問題解決のための具体的なヒントをくれたりします。
また、自分と同じような壁を過去に経験したメンバーがいれば、その体験から学び、より実践的な対処策を得ることができます。特に経営者に多い燃え尽き症候群に陥りそうなときでも、仲間の存在が心の支えとなり、前に進む力を与えてくれるでしょう。
マスターマインドグループを運営するための7つのステップ

1.マインドグループの目的とテーマを明確にする
まずは、グループが目指す目標をはっきりさせましょう。
例えば「売上拡大」「新規事業のアイデア創出」「リーダーシップ力の強化」など、目的を定めることで話し合いの方向性がブレにくくなります。テーマが曖昧だと、雑談中心になったり学びが薄くなる可能性があります。目的を明確にし、全員が同じ方向に向かえるように設定してください。
2.信頼できるメンバーを選ぶ
メンバー選びはグループが成功する上での大切な要素です。
信頼関係を築ける相手であることは前提で、できれば自分と異なる強みやバックグラウンドを持つ人を選びましょう。同じ視点ばかりでは新しい気づきは生まれにくいからです。経営者仲間や異業種の人材、または尊敬できる同世代の起業家などを候補にするとよいでしょう。
3.活動の基本ルールを共有する
安心して意見を交換できる場にするために、あらかじめ基本ルールを全員で決めて共有しましょう。
例えば「守秘義務を徹底する」「批判ではなく建設的なフィードバックを行う」「全員が発言する機会を持つ」などがあげられます。ルールがあることで、遠慮なく本音を話せる雰囲気が生まれ、議論の質も高まります。ルールは押し付けではなく、合意形成として共有することが大切です。
4.定期的にミーティングを開催する
マスターマインドグループは継続してこそ効果を発揮します。月1回や隔週など、全員が無理なく続けられるペースを決め、必ず定期的に開催しましょう。スケジュールが流動的だと参加が不安定になり、グループの一体感も失われます。
対面でもオンラインでも構いませんが、日程を固定することで習慣化され、参加者の意識も高まります。
5.進行役を設ける
会議の流れを整理し、時間を有効に使うためにファシリテーター(進行役)を置くのがおすすめです。
進行役は一方的に議論をリードするのではなく、全員が発言できるように場を整える役割を持ちます。毎回同じ人が担当しても良いですが、持ち回りにするとメンバー全員が主体的に関われます。進行役がいることで、無駄話が減り、内容の濃い時間を過ごすことができます。
6.議事録やメモを取り、全員で共有する
会議中に出たアイデアや決定事項は、必ず記録して共有しましょう。
忘れてしまうとせっかくの学びや約束が形に残りません。簡単な議事録や要点をまとめたメモを、メールやチャットで配信するだけでも効果的です。後から振り返ることで学びを定着させられるほか、欠席したメンバーも内容を把握できます。記録を習慣化することで、グループ全体の成長につながります。
7.活動を振り返り、フィードバックを取り入れる
一定期間ごとに活動を振り返り「どんな学びがあったか」「運営方法は改善できるか」を確認しましょう。メンバーから率直なフィードバックを集めることで、より有意義な場に進化させることができます。
最初に決めたルールや進め方も、状況に応じて柔軟に変えて構いません。常に改善を意識することで、グループは成長を続け、参加する価値を高めていきます。
マスターマインドグループの例

異業種交流会
異業種交流会は、業種や立場の異なる経営者や起業家、ビジネスマンが一堂に会し、情報交換や人脈づくりを行う場です。同じ業界にいると考え方が偏りがちですが、異業種の人と話すことで異なる視点から新しい発想やビジネスチャンスが生まれることもあります。
また、共同プロジェクトやコラボレーションに発展するケースも珍しくありません。近年ではオンライン形式の交流会も増えており、地方に住んでいても気軽に参加できるようになっています。
商工会議所の経営者交流会
商工会議所が主催する経営者交流会は、地域の中小企業経営者や起業家が集まり、情報交換や学びを深める場として広く活用されています。地域密着型であるため、地元の課題や市場動向を共有できるのが特徴です。会員同士での取引につながるケースも多く、販路拡大や新しいビジネスパートナーの獲得にも役立ちます。
また、商工会議所ならではの専門家によるセミナーや講習会が組み合わされることもあり、実務に直結する知識を学べる機会もあります。地域経済を支える拠点として、商工会議所の交流会はまさにマスターマインドグループ的な役割を果たしていると言えるでしょう。
経営者モーニングセミナー
経営者モーニングセミナーは、倫理法人会が全国各地で開催している早朝の学びの場です。
毎週決まった曜日の朝に開催され、経営者やビジネスリーダーが集まって講話を聴き、実践的な気づきを得られるように支援しています。倫理観やリーダーとしての姿勢を重視するのが特徴で、経営課題の解決だけでなく人間力の向上にもつながります。
オンライン経営者コミュニティ
オンライン経営者コミュニティは、インターネットを通じて全国の経営者や起業家がつながり、学びや交流を深める場です。
NewsPicks(ニュースピックス)やSchoo(スクー)などのサービス、あるいはFacebookグループやLINEオープンチャットといったSNSを活用する形が一般的です。時間や場所を選ばず参加できるため、地方在住や多忙な経営者にとっても利用しやすく、近年急速に人気が高まっています。オンライン上では専門家による講義やディスカッションが行われることもあり、最新の経営知識やトレンドを学べるのが大きな魅力です。
また、チャットや掲示板を通じて日常的に相談や情報交換ができるため、従来の勉強会以上に継続的なサポートが得られる点も特徴です。
スタートアップコミュニティ
スタートアップコミュニティは、起業家や投資家、メンターが集まり、互いの挑戦を支え合う場です。
国内では「Slush Tokyo」や「Samurai Incubate」などのイベント・プログラムが知られており、資金調達や事業戦略に関する知識を共有できる貴重な機会となっています。ここでは同じ志を持つ起業家同士がつながり、アイデアをブラッシュアップしたり、協業やパートナーシップに発展したりすることもあります。
大企業の新規事業担当者やベンチャーキャピタルとの出会いが生まれることも多く、事業の成長スピードを加速させるきっかけになります。こうした場は、挑戦を続けるアントレプレナーにとって大きな飛躍のきっかけになります。
まとめ
マスターマインドグループは、志を同じくする仲間と出会い、互いに学び合いながらビジネスを成長させるための有効な仕組みです。また、責任の重い経営者にとって、孤独やストレスを軽減してくれるセルフケアの場としても効果を発揮します。
大切なのは、自分に合ったグループを選び、安心して本音を共有できる環境を整えることです。まずは参加する目的を明確にし、必要であれば知人に紹介してもらえないか聞いてみましょう。もし理想的な場が見つからない場合は、自ら立ち上げるのも一つの方法です。信頼できるメンバーを集め、テーマや会議の頻度を決めることで、継続的な成長を支えるコミュニティを作ることができます。
マスターマインドグループに関するFAQ
マスターマインドグループとは何ですか?
マスターマインドグループとは、同じ志を持つ仲間が集まり、定期的に会合を開いてアドバイスやサポート、フィードバックをし合うコミュニティです。多くはビジネスに関連していますが、自己成長やライフスタイルの改善など、個人のテーマに取り組むグループもあります。
マスターマインドグループの費用はいくらですか?
マスターマインドグループは、目的や形態によって費用が大きく異なります。交流目的なら1回3,000〜5,000円程度で参加できる会もあれば、専門家の指導や長期プログラムを含む本格的なものでは年間100〜200万円に達するケースもあります。まずは気軽な会から試し、自分に合った投資額を見極めるのがおすすめです。
マスターマインドグループでは何が行われますか?
メンバー同士が目標や課題を共有し、互いにフィードバックやアドバイスを行います。経営の悩みや新しいアイデアを持ち寄り、異なる視点から解決策を探るのが特徴です。また、情報交換や人脈紹介を通じて学び合い、ビジネスの成長を後押しします。
マスターマインドグループに参加するのにお金を払うべきですか?
無料で参加できるグループもありますが、有料のグループには独自のメリットがあります。運営には時間や労力がかかるため、参加費を設定することで質の高い運営やリソース提供が可能になります。
マスターマインドグループを見つけるにはどうすればよいですか?
知人に紹介してもらうほか、ネット検索で探す方法があります。LINEオープンチャットやFacebookグループ、異業種交流会や商工会議所の勉強会などもおすすめです。
理想的なメンバー数は何人くらいが良いですか?
6~12名程度が理想という意見があり、幅広い視点を得たい場合、特におすすめです。ただし人数が多い場合は、発言の機会や時間配分に配慮し、全員が参加しやすくなる工夫が必要です。
文:Takumi Kitajima





