SNSやテクノロジーの普及に伴い、さまざまなマーケティング手法が誕生しています。その中でも、限られた予算でも大きなインパクトと話題性を生み出せる手法として注目を集めているのが、ゲリラマーケティングです。街中でのサプライズ演出や意外性のある仕掛けをつくることで、消費者の興味を一瞬でつかみ、記憶に残る体験を生み出すことができます。そのユニークさから自然とSNSで拡散されやすく、広告費を抑えながらブランドや商品を宣伝できるのが魅力です。
この記事では、ゲリラマーケティングの種類や効果的なやり方、国内の成功事例までわかりやすく紹介します。
ゲリラマーケティングとは

ゲリラマーケティングとは、少ない予算で大きな話題性と注目を集めることを目的とした、従来のやり方にとらわれない広告戦略のことです。
街中での突発的なイベントや意外性のある広告表現など、従来の広告とは異なるアプローチで消費者の興味を引きつけます。驚きや面白さ、感情を伴う体験を提供することで、記憶に残りやすく、SNSでの拡散も期待できる点が特徴です。費用対効果が高く、特にスタートアップや若者向けブランドに適した手法として広く活用されています。
ゲリラマーケティングの6つの手法

1. ストリートマーケティング
ストリートマーケティングとは、街中などの公共空間で直接消費者と接点を持つことで、ブランド認知度を向上させるマーケティング手法です。従来の広告とは異なり、通行人の目を引くようなパフォーマンスやサンプリング、アート、イベントなどを通じて自然に興味を喚起します。
例えば、次のようなアイデアが考えられます。
- 街頭でユニークなサンプルを配布する
- 壁画・ストリートアートを使ったプロモーションを実施する
- インスタ映えスポットになるような広告を打つ
ターゲット層が多く集まるエリアで行うことで、高い認知効果を得られ、SNS拡散によってバズを生む可能性もあります。
2. アンビエントマーケティング
アンビエントマーケティングとは、日常生活の中にある「意外な場所」や「自然な状況」に広告やメッセージを巧みに溶け込ませるマーケティング手法です。
人々が普段目にする環境に驚きやユーモアを加えることで、強い印象を与え、記憶に残りやすくします。例えば、エレベーターの床やバスの座席、横断歩道など、通常は広告がない場所にクリエイティブなビジュアルを配置することで話題を生み出します。従来の広告のように押し付けがましくなく、自然な形でブランド体験を届けられる点が特徴です。
消費者が思わず写真を撮りたくなるデザインを意識することで、SNSでの拡散効果も期待できます。
3. バイラルマーケティング
バイラルマーケティングとは、企業がコンテンツや企画を仕掛け、消費者の自発的な情報共有を促すマーケティング手法です。
英語のviral(ウイルスのように広がる)という言葉の通り、SNSでの投稿や口コミ、UGCを通じて爆発的に拡散されることを目的としています。単なる広告ではなく、「面白い」「感動する」「驚く」といった感情を刺激するコンテンツ設計が重要です。例えば、次のような事例が挙げられます。
- 動画キャンペーン
- ユーザー参加型のチャレンジ企画
- ハッシュタグキャンペーン
制作コストを抑えながら高い広告効果が期待できるため、スタートアップやD2Cブランドなどでも効果的に活用されています。
4. アンブッシュマーケティング
アンブッシュマーケティングとは、公式スポンサーではない企業が、大規模イベントやキャンペーンに便乗して自社ブランドを宣伝する手法です。
例えば、オリンピックやワールドカップなどのスポーツイベントにあやかり、開催記念キャンペーンを実施するといったケースが挙げられます。
広告費を抑えつつ、話題性や露出を高められる一方で、公式スポンサーとのトラブルや規制リスクが伴う点には注意が必要です。前述のケースでいえば、「オリンピック」や「五輪」など開催されるイベント名を無断でキャンペーンに含めるとトラブルに発展する可能性があります。法的な範囲内での演出にとどめるほか、必要に応じて許可を取ったうえで実施しましょう。
5. プロジェクションマーケティング
プロジェクションマーケティングとは、建物の壁面や公共空間に映像を投影し、視覚的なインパクトで人々の注目を集めるマーケティング手法です。
プロジェクションマッピング技術を活用することで、静的な広告では伝えきれないダイナミックな演出が可能になります。例えば、新商品の発表時に建物を巨大スクリーンとして使用したり、ブランドの世界観を映像作品のように表現したりするケースがあります。
夜間の街中やイベント会場など、多くの人が集まる場所で実施することで、消費者に強いインパクトを与えることができ、SNSでの拡散効果を狙えます。一方で、費用や許可取得の負担が大きいほか、近隣住民や施設の利用者から苦情が来るリスクもある点には注意しましょう。
6. 体験型マーケティング
体験型マーケティングとは、消費者に商品やブランドの価値を「体験」を通して感じてもらうことを目的としたマーケティング手法です。
単に広告を見るだけでなく、実際に触れる・試す・参加することで、感情的なつながりを生み出します。例えば、次のような施策が考えられます。
五感を刺激する体験は記憶に残りやすく、ブランドへの好感度や信頼感を高める効果があります。SNS投稿による拡散も期待できるほか、消費者のリアルな反応を得ながらブランドストーリーを効果的に伝えることができる点も大きなメリットです。
ゲリラマーケティングのメリット

費用対効果が高い
ゲリラマーケティングの最大の魅力の一つが費用対効果の高さです。
従来のテレビCMや大規模な広告キャンペーンに比べ、限られた予算でも高い注目を集められるのが特徴です。アイデアとクリエイティブ次第で、少ないコストでも人々の関心を引き、強い印象を残すことができます。
例えば、街中でのサプライズイベントやストリートパフォーマンスは、制作費を抑えながら大勢の人に一度にアプローチできます。そのインパクトの強さから、SNSを通じて拡散される可能性が高まり、結果的に大きな宣伝効果が期待できます。このように、ゲリラマーケティングは限られた資金で最大のインパクトを狙いたい企業やスタートアップに最適な手法です。
記憶に残りやすい
ゲリラマーケティングは、予想外の場所や方法で行われるため、人々の記憶に強く残りやすいという特徴があります。従来の広告のように一方的に情報を伝えるのではなく、驚きや感動、笑いといった感情を伴う体験を通じて印象づけることで、長期的な記憶に残るのです。
例えば、プロジェクションマッピングや、ユニークなビジュアルを使ったインスタレーション広告は、見る人に強いインパクトを与えます。こうした体験は「ちょっと誰かに話したくなる」心理を生み出し、自然な口コミ拡散にもつながります。ブランドを記憶に残すうえで非常に効果的な手法です。
ターゲット層にアプローチしやすい
ゲリラマーケティングは、特定のターゲット層に直接アプローチしやすいという強みがあります。
例えば、若者をターゲットにしているなら、話題のスポットやイベント会場など、ターゲットが実際に足を運ぶ場所で仕掛けることで、効果的に関心を引くことができます。従来のマスメディア広告のように不特定多数に広く発信するのではなく、狙った層にピンポイントで訴求できるため、無駄なコストを抑えながら高い反応率を得られるメリットがあります。
ターゲット層の行動に合わせた場所で、ブランドや商品をリアルに体験してもらうことで、消費者との距離が縮まり、ブランドロイヤルティの向上やファン獲得が期待できます。
SNSで話題になりやすい
SNSで話題になりやすいという点も、ゲリラマーケティングの大きなメリットです。
街中でのサプライズ演出や、思わず写真や動画に撮りたくなるユニークな仕掛けは、ユーザーによって自然に拡散されやすいのが特徴です。企業が広告費をかけて宣伝するよりも、一般の人々が自発的にシェアすることで、より信頼性が高くリアルな口コミ効果を生み出します。特にX(エックス)やInstagram(インスタグラム)、TikTok(ティックトック)などでは、驚きや面白さ、感動を感じた瞬間がすぐに拡散されるため、一夜にして話題になることも珍しくありません。SNS時代において、ゲリラマーケティングは高いバズ効果を狙える手法です。
ゲリラマーケティングの成功事例4選
日清食品
日清食品は、SNSで話題となった「謎肉」に着目し、期間限定商品「カップヌードル謎肉祭」を発売しました。
カップヌードルに入っている具材である「ダイスミンチ」は原料が不明だったことから、2005年頃からネット上で「謎肉」という愛称で話題となっていました。同社はこの話題に乗じて、ネット上で親しまれてきた「謎肉」という名称をそのまま活用した新商品を発売しました。店頭よりもSNSでの拡散を狙った戦略が功を奏し、発売直後から「#謎肉祭」がトレンド入りしました。数万件を超える投稿が生まれ、商品は一時品薄状態になるほどの人気ぶりとなりました。
ユーザーが自発的に盛り上がる仕組みを仕掛け、バイラル拡散を実現した成功事例です。
コカ・コーラ
コカ・コーラでは「ネームボトル」キャンペーンを展開し、SNSでの拡散に成功しています。このキャンペーンでは、各コーラ商品に250種類以上の人名をラベリングして販売したところ、SNSで話題となり、自分や友人、家族の名前を見つけたという投稿が相次ぎました。その結果、累計販売数が2.5億円を突破するという一大ムーブメントを巻き起こしました。商品には手を加えず、楽しさや喜びをシェアする仕掛けを施し話題を呼んだこのキャンペーンは、まさにバイラルマーケティングの成功事例といえるでしょう。
JAグループ
JAグループは、新宿駅の地下にある15本の柱をリアルな野菜に変えるという、ゲリラマーケティングを実施しました。このイベントでは、巨大野菜の柱のほか、全長80メートルにおよぶ野菜棚ポスターを設置し、それぞれQRコードを配置しました。QRコードを読み込むと野菜占いや野菜の特設販売サイトへ飛ぶ仕掛けとなっており、国産野菜やJAファーマーズマーケットを効果的にアピールできる仕組みを展開しました。通行人の目に留まるビジュアルを設置し自社への関心を引く、優れた広告戦略といえるでしょう。
カネボウ
カネボウ化粧品は、スキンケアブランド「suisai beauty clear」のリニューアルプロモーションとして、東京メトロ新宿駅構内にてゲリラ的なサンプリング広告を展開しました。
壁面には無数のサンプル品が貼り付けられ、台紙には「自分らしく、美しく」といった応援メッセージが添えられていました。通勤途中の多忙な女性たちに直接アプローチし、ターゲット層への共感を示すと同時に商品を体験してもらえる場を提供しました。午前中には全てのサンプルが持ち帰られるほどの注目を集め、SNSでの投稿も多数見られました。体験型マーケティングをうまく活用してブランドイメージの刷新に成功した事例です。
まとめ
ゲリラマーケティングは、予算の大小ではなくアイデアの質が成果を決める手法です。驚きや楽しさといった人の感情を動かす仕掛けは、どんな企業でも実践でき、SNS時代の今だからこそ大きな力を発揮します。この記事で紹介した成功事例のように、ユーザーが思わずシェアしたくなる体験を生み出せれば、広告費を抑えながら大きな話題を生み出すことができます。
まずは、ゲリラマーケティングで達成したい目的やターゲット層を明確にしたうえで、どんなコンテンツならブランドや商品の特徴が伝わるか、どんな仕掛けならターゲットがシェアしたくなるのかを模索してみましょう。
よくある質問
なぜ「ゲリラマーケティング」と呼ばれる?
ゲリラマーケティングは、少数で奇襲を仕掛けるゲリラ戦に由来しています。限られた予算でも、サプライズ性や独自のアイデアで大きなインパクトを生み出す点が共通しているため、この名がつけられました。
ゲリラマーケティングは合法?
ゲリラマーケティング自体は合法ですが、実施には注意が必要です。無断で壁や道路に描画したり、公共物を占有したりする行為は法律違反になります。屋外で仕掛けを行う場合は、必ず自治体や土地・建物の所有者から事前に許可を得ることが大切です。適切な手続きを踏むことで、安全かつトラブルなく実施できます。
個人事業主でもできるゲリラマーケティング施策は?
個人事業主でも、低コストでできるゲリラマーケティング施策は多くあります。例えば、店頭前でユニークなディスプレイを設置したり、思わず写真を撮りたくなる看板・チョークアートを配置したりといったアイデアが考えられます。限定サンプリングも効果的でしょう。小さな工夫でもSNS拡散につながり、注目を高められます。
ゲリラマーケティングの効果を測定する方法は?
効果測定には、SNSの投稿数やエンゲージメント、来店数や売上の変化、ウェブサイトのアクセス数、キャンペーン期間中の問い合わせ件数などを指標として活用します。事前に目標指標を設定しておくことで、施策の成果をより正確に評価できます。
文:Takumi Kitajima





